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2003年10月27日(月) 17時40分

ウェブログがスパムの新たな標的にWIRED

 ウェブ関連の各種技術の成熟度がスパム業者からの注目度で測れるとしたら、ウェブログ(ブログ)は間違いなく円熟期を迎えている。

 今月、激しいスパム攻撃の洗礼を受けたブロガーたちは、スパム対策用の武器を大慌てで捜し求め、長年にわたって電子メールやユーズネットを悩ませてきた問題に直面することとなった。ブログはどのくらい開放性を保てるのか? ブロガーは、どんな自由なら、スパマーを締め出すのと引き換えに手放してもいいと思うのだろうか?

 「ブログ・スパム」は、にわかに生じた全く新しい問題というわけではない。いわゆる「リファーラル(紹介)・マーケティング企業」は昨年、 http://www.wired.com/news/culture/0,1284,56017,00.html クライアントのURLをブログサイトの過去ログにばらまく、という商売を始めた。これとほぼ時を同じくして、ブロガーたちから自分のサイトのコメントに時折スパムが出現するという報告が出るようになった。

 しかし最近までは、こうしたブログのコメントへのスパム攻撃、いわゆる「コメント・スパム」も時々迷惑になるぐらいのものだった。だが、ブロガーのジェイ・アレン氏は、自分の投稿に対し4日間にわたって120件のスパム攻撃を受け、この問題の緊急度が新たな段階に達していることを知った。

 「あの日、われわれがジャングルで新たな捕食者に直面していることに気づいた。そして、自分たちが何らかの対策を——それも緊急に——しなければ、連中の餌食にされてしまうことがわかった」とアレン氏は話す。

 最近スパムの嵐が集中したのは、人気を集めている http://www.sixapart.com/ 米シックス・アパート社のブログ発行システム『 http://www.movabletype.org/ ムーバブル・タイプ』だった。ムーバブル・タイプを使ったブログサイトでは、読者がコメント機能を利用する際にとくに登録する必要はない。また、ブログ発行者はIPアドレスによってのみコメントをブロックできるが、スパム業者はIPアドレスによる制限など簡単に迂回できる。

 「ムーバブル・タイプのコメント機能は非常にオープンにできていて、コミュニケーションの道具としては申し分ない。だが残念ながら、攻撃対象にもなりやすい」とアレン氏。

 それまでわずかだったコメント・スパムの件数は、9月末に一気に膨れ上がった。オーサリングツール『フラッシュ』を使った制作に携わるマイケル・ガン氏のブログには、『preteen』や『lolita』といったハンドル名で150件のメッセージが書き込まれた。また、ウェブデザイナー兼開発者のD・キース・ロビンソン氏のブログは、一度に40件のスパム攻撃を受けるようになった。

 アドレス収集ロボット(spambot)はウェブ全体を駆けめぐり、ブロガーのコメントのスレッドをひっかき回して、「『バイアグラ』を買う」や「ダイエット薬」といったキーワードに埋め込んだリンクを多数残していった。さらに巧妙な手口になると、「素晴らしいサイトはここ!」といった一見何の害もなさそうな宣伝文を書き、『underage』(未成年)、『cheap shoes』(安い靴)、『phentermine』(フェンテルミン)[食欲抑制剤]などを書き手の名前に装って、誘導したいURLをコメントの署名欄に入れているものもあった。

 電子メールのありふれたスパムと違い、ブロガーが受け取るコメント・スパムはクリック数の向上を目的にしたものではないと、ブロガーたちも認めている。このスパムにとって、一番見てほしい相手は人ではなく、あらゆるサイトを隈なく見回っている検索エンジンロボットだったのだ。

 膨大な数のブログのコメントにURLを埋め込むことで、そのブログ・コミュニティーがバイアグラを安く買える最新のウェブサイトの情報で盛り上がっていると、検索エンジン(とくに『グーグル』)に思い込ませることができる——どうやらスパマーはそう考えているようだ。グーグルはリンク数を人気の目安として扱うため、理屈としては、多数のブログから張り巡らされたスパマーのサイトへのリンクによって、そのサイトは検索エンジンのランキングの上位につけることになる。

 ムーバブル・タイプを使ったブログはウェブ上に存在する大量のブログのごく一部でしかないが、その中には最大級の人気と影響力をほこるサイトもいくつか含まれる。たとえば、ウェブログの権威、 http://www.instapundit.com/ グレン・レイノルズ氏が運営するサイト(レイノルズ氏はムーバブル・タイプのコメント機能を無効にしている)や、俳優の http://www.wilwheaton.net/ ウィル・ウィートン氏のサイト、それに http://www.blogforamerica.com/ ハワード・ディーン大統領候補の選挙運動サイトなどがそうだ。

 ブログを収集するプロジェクト『 http://www.blogdex.net/ ブログデックス』を立ち上げたキャメロン・マーロー氏は、「検索結果表示の順位が高かったり、訪問者数が多かったりするブロガーの集団を選ぼうとする場合、ムーバブル・タイプは出発点として正しい選択だ」と述べる。

 しかし、『 http://searchenginewatch.com/ サーチエンジン・ウォッチ』の編集者を務めるダニー・サリバン氏は、コメント・スパマーが、検索エンジンの結果に対するブログの影響力を過大評価している可能性があると指摘する。

 「ブログが検索エンジンに対して超人的な力を持つという誤解が一部に存在しているが、実際はそうではない」とサリバン氏。「この誇大宣伝を鵜呑みにして、表示結果のランクを上げるためにはブログからリンクをいくつも張ればいいと考えた者もいるかもしれない」

 さらにサリバン氏は、コメント・スパムが検索エンジンの結果にどんな効果をもたらすにせよ、それは長くは続かないだろうと話す。「スパムの性質を帯びたものはどれも失敗する戦略だ。非常に短い期間なら効果があるかもしれないが、検索エンジンはまたやってくる。そしてそこからまた、検索エンジンとそれを最大限活用する人間との、終わりのない軍拡競争へ新たな1歩を踏み出すだけだ」

 しかし今のところ、コメント・スパムが深刻な害を及ぼしていることに変わりはない。ある意味では、電子メールのスパムよりもはるかにたちが悪いとも言える。少なくともスパムメールを見つけて削除するのは容易だが、コメント・スパムの場合、散在する大量のスレッドにたまっていくのを見落とす可能性がある。

 そして、ブロガーがスパムの蔓延を見つけた場合、好ましくないコメントを削除するという退屈な作業を延々と続ける羽目になってしまう。

 シックス・アパート社の共同設立者である、ベン・トロット、メナ・トロット夫妻は、近々発表される予定の、ムーバブル・タイプとブログ・ホスティング・サービス『タイプ・パッド』では、コメント処理機能を向上させる計画だと述べている。現在検討しているのは、特定のIPアドレスから書かれたコメントの全削除や、ユーザーが書き込むたびに送られる通知電子メールから直接コメントを削除できる機能といったものだ。

 しかし、トロット夫妻は、即効の対策はないと警告する。「電子メールのように、別のアドレスに切り替えれば完全にスパムを撃退できるといった単純な解決法はない」と、同夫妻はシックス・アパート社の公式ブログに http://www.sixapart.com/log/2003/10/comment_spam.shtml#more 書いている。

 だが、ブロガーが単純な解決法を使うことにリスクがあるわけではない。ブロガーたちから助けを求める声が上がってからたった数週間で、ムーバブル・タイプのユーザーは数々のテクニック、回避策、徹底的なアドオンツールを編み出して問題と闘った。当然のことながら、方々で議論のやり取りが行なわれた。

 多くのブロガーたちがスパムの洪水を止めることに成功したと報告したが、それまでの経験は、これから起きることのほんのさわりだろうという点では、誰もが同じ意見のようだった。

 『ウィンズ・オブ・チェンジ・ネット』に、『Armed Liberal』という人物が http://windsofchange.net/archives/004141.html こう書いている。「これらの攻撃が各ウェブログに山ほどのコメントを加えられる仕組みになっていないとする理由はないし、また今後そうならないという理由もない」

[日本語版:近藤尚子/高森郁哉]日本語版関連記事

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