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2003年10月27日(月) 15時02分

社説2 番組内容の質向上で競争を日経新聞



 日本テレビのプロデューサーが番組の視聴率を上げるため、モニター調査の対象世帯に謝礼を渡すという事件が発覚した。マスメディアが自らの媒体評価を不当にゆがめたという前代未聞の事件である。

 萩原敏雄社長は「社としての関与は一切ない」とし、不正行為はあくまで社員の判断と説明した。発覚したのは関東地区の調査対象600世帯のうち4世帯で、「視聴率では0.67%にしかならない」という。

 しかし視聴率の1%は関東地区では約16万3000世帯に相当する。テレビ局間では最近、ワイドショーなどを中心に激しい視聴率競争が展開されており、視聴率は広告料にも直接影響する。事件はプロデューサーが単独で起こしたとしても、テレビ局の視聴率競争が背景にあったことは否めないだろう。

 問題は調査世帯が割り出せたことと、わずか4世帯でも視聴率を変えられる仕組みにもある。テレビの視聴率調査は外資系の「ニールセン」と電通などが設立した「ビデオリサーチ」が担ってきたが、ACニールセンが2000年3月に撤退、現在は1社独占状態にある。

 さらにテレビ局の番組評価システムが視聴率に偏っている点も問題といえよう。日本テレビは1994年から9年連続で視聴率トップの座にある。数字による評価は客観性があり、テレビ局や広告代理店にも営業上使いやすい。しかし結果的には興味本位の番組が増長し、先進国の中でも日本のテレビ番組の質が最も損なわれているといわれる。

 視聴率調査の手法は米国から導入したものだが、地域性が強く、公営放送も多い米国では日本ほど視聴率に一喜一憂することは少ない。しかも有料のケーブルテレビの普及により、調査自体が以前ほど意味を持たなくなった面もある。

 日本でもデジタル放送時代を迎え、電話回線で視聴状態を確認できる双方向機能が広がりつつある。またデジタル録画装置の普及は視聴率が注目されるスポット広告の媒体効果を変えようとしている。その意味では視聴率の数字を競うよりも番組の質で評価する方向に、テレビ局は早く制作体制を変えていくことが必要であろう。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031027MS3M2701N27102003.html