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2003年10月26日(日) 00時00分

視聴率を字引でひくと、用例が二件のっていた。一つは野坂昭如… 東京新聞


 視聴率を字引でひくと、用例が二件のっていた。一つは野坂昭如氏で「この番組は深夜ではいちばんの視聴率を上げ、えらい人気やという」(とむらい師たち)、もう一つは高橋和巳氏で「その番組は視聴率も高く、脚本家や俳優との息も合って、ドラマとしての質も高かった」(白く塗りたる墓)▼ともに昭和四十年代の作品で、視聴率というもともとは市場調査向けの業界用語がそのころには番組の人気や質の指標となり、やがてテレビ制作者たちが血道を上げる数字に変容していく。この絶対的尺度は年ごとに偉くなり、日本テレビの四十一歳のプロデューサーはとうとう買収に走った▼広告が主収入の民放は当然ながら視聴率にこだわる。その数字は番組内容にかかわり、また巨額を稼ぎ出す魔法のつえでもある。しかも放送翌朝には分かる▼「2000年のテレビジョン」(ザテレビジョン編・角川書店)という本には、視聴率が怖くて出社がいやになり山手線を二周しようと思ったなどという制作者の述懐がのっている。悲喜劇どちらにせよ本音に違いない。テレビ局という大組織もその中にある▼視聴率は、しかし正直でもある。日本テレビが十年ほど前「大追跡」という番組で視聴率問題を取り上げたそうだ。視聴率は19%で通常より5%も上昇したという。視聴率をはかる機械を置いた世帯では身近な問題だったに違いない。そういう認識の大切さはテレビも新聞も変わるまい▼視聴率買収は、金もうけやプロデューサーの我欲にはとどまらない。社会をあざむいた罪に等しい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/hissen/20031026/col_____hissen__000.shtml