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2003年10月25日(土) 03時12分

<視聴率操作>日テレ、視聴者の信頼裏切る毎日新聞

 日本テレビのプロデューサーが視聴率アップのためにモニター世帯に現金や商品券を配っていた不祥事は、テレビ局のし烈な視聴率競争の「負」の側面を浮き彫りにした。視聴率の数字がCMの値段を左右し、そのため民放のテレビ番組の内容と、制作者から出演者までの命運を事実上決めてきた。民放テレビでは最も歴史があり、8月に開局50年を迎えた老舗で発覚した「視聴率買収」に、ライバル各局にも衝撃が走った。

◆1位維持の重圧?

 「なぜ視聴率1位の日テレがそんな不正を」「トップ維持のプレッシャーがあったのか」。テレビ界は今回の不祥事を複雑に受け止めている。というのも、日テレは94年から9年連続で視聴率トップを続け、03年もほぼV10が決定的。しかも、全日、プライム(19〜23時)、ゴールデン(19〜22時)、ノンプライムとどの時間帯でも首位の4冠王と、他局を圧倒する強さを続け、これが日本のテレビ局で営業利益トップ(03年3月期474億円)という地位を支えているからだ。

 日テレの視聴率の構造は、巨人戦ナイターが今季15%を切って低迷し、連続ドラマも低空飛行が続く一方、「伊東家の食卓」や「行列のできる法律相談所」など夜のバラエティー群が十数%の高い視聴率を維持しているのが特徴だ。

 24日の記者会見で「背景には視聴率至上主義が社内にあったのではないか」との質問に、萩原敏雄社長は「(プロデューサーは)思い込みの激しい男で、本人が単独でやったこと。でも、もし本人がそう感じていたのなら反省する」と、個人の資質の問題を強調した。

 日テレは昨年から、番組編成の構造改善に乗り出していた。視聴率の獲得だけでなく、若者に根強い人気を持つフジテレビを意識して、20〜30代に照準を合わせるスポンサーを取り込む戦略を始めた。そのために夜11時台に若者向けバラエティーをそろえ、スタジオからの生番組も増やした。

 こうした局の方針に「V慣れした慢心が一番怖い。目線が高くなり、謙虚さや丁寧さを失うと、あっという間に落ちていく。心のすきが非常に危険だ」と危惧(きぐ)する幹部もいたほどだ。局のバラエティー重視の姿勢が、バラエティー番組を手掛けてきたプロデューサーの心の重圧になっていたのかもしれない。ベテランプロデューサーは「バラエティー番組でも連続ものはすぐに高い視聴率が取れるものは少なく、やっていくうちにどんどん手直しして面白くしていくものだが、単発番組は一発勝負だけにプレッシャーがかかったのかもしれない」と推測する。

 テレビ界では「視聴率20%を超えたら合格」という時代が長く続いたが、視聴者の多様化、若者のテレビ離れ、BS、CSの多チャンネル化などで、90年代に入ると30%を超える番組が減った。今は「15%とれればまずまず」といわれるが、2時間ドラマでは初回に15%ラインをクリアできないと、多くが消えていくという。

 プロデューサー側からの視聴率操作の依頼に応じた世帯は1番組につき、関東の調査対象600世帯のうちの4世帯。萩原社長は「600分の4は視聴率では0.67%で、あまり変化のある数字ではない」と語ったが、0.67%でもプロデューサーは、わらにもすがる思いだったのだろうか。【網谷隆司郎】

◆視聴率の高低、収入に直結

 ビデオリサーチによる視聴率調査は全国27地区で行われ、サンプルとなる対象家庭は6250世帯。最大の調査地区が関東と関西でともに600世帯だ。各家庭のテレビ(最大8台まで)にピープルメーターという測定器が取り付けられる。対象世帯は2年間ですべての世帯が入れ替わる。すべての番組について1分ごとの視聴率が記録され、翌朝午前9時過ぎには契約先のテレビ局、スポンサー、広告代理店に伝えられる。

 日本での機械式によるテレビの視聴率調査は、61年に米国の調査会社ニールセンによって始まった。62年には電通や主要な民放各社の出資でビデオリサーチが設立され、両社による調査体制が続いた。

 しかし、ニールセンは00年3月に日本から撤退し、ビデオリサーチの1社体制になった。チェック機関もなく、視聴率は「信頼性」だけが頼りといえる。

 視聴率の高低はスポット広告といわれる広告料金に反映され、テレビ局の収入に直結する。業界には「シャンパン理論」という法則がある。グラスをタワー状に積み上げてシャンパンを注ぐように、利益率の高いスポット広告はまず視聴率の高い局に集まり、その局のCM枠があふれると、次に視聴率の高い局に行く。それだけに「1%でも高く」が関係者の至上命令になっている。

 不況下のスポンサーは「より効率的」なCM提供を求める。民放のあるプロデューサーはかつて「金で数字を買えるなら買いたい」と話していたが、それが現実のものとなった。【荻野祥三】

◆在京のテレビ各局、驚きと批判相次ぐ

 「あってはならないこと」。日テレの前代未聞の不祥事に、在京のテレビ各局から驚きの声と厳しい批判が相次いだ。

 NHK広報局は「番組制作に携わるものの基本的な姿勢が問われる問題。視聴者の信頼を裏切ることだと考える」とのコメントを発表した。TBS広報部は「視聴率の信頼にかかわる問題」、テレビ朝日広報部も「事実だとすれば、テレビの信頼を揺るがす重大な不正行為だ」と指摘した。

 テレビ東京は「視聴率は視聴者から共感と信頼とともに得るもので、同じテレビに携わるものとして大変残念」としながらも「モニターのほとんどの方は客観性の重要さを十分認識されていると思う。今回のことで視聴率調査の客観性そのものが損なわれるような事態にまで至ったとは考えていない」と話した。

 一方、フジテレビ広報部は「日本テレビが調査中ということであり、コメントする立場にない」と述べるにとどまった。【木戸哲、宍戸護】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031025-00000154-mai-soci