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2003年10月24日(金) 17時31分

サイバー犯罪の巣窟、汚名を返上したいルーマニア(上)WIRED

 ルーマニア、ブカレスト発——建物の外はマイナス60度近い極寒の世界。だが、 http://www.nsf.gov/ 全米科学財団(NSF)の南極研究センター内の科学者に別種の寒気を催させたのは、同センターのコンピューターに届いた1通の電子メールだ。

 メールには「サーバーをハッキングした。金を払わなければ、基地のデータを他国に売り、システムがいかに脆弱であるかを世界中に知らせてやる」との脅迫メッセージが記されていた。

 これがでっち上げでないと誇示するかのように、メッセージには恐喝者がサーバー内を自在に動き回ったことを示す、サーバー内の科学的なデータが記されていた。そのサーバーは、センターで暮らす50人の科学者の生命維持システムの制御も行なっているものだ。

 米連邦捜査局(FBI)は、この電子メールがブカレスト市内のインターネットカフェから発信されたと特定し、これを受けてルーマニア警察が地元在住の容疑者2名を逮捕した。コンピューターに詳しいルーマニア人が、サイバー犯罪という影の世界で手強い脅威として急浮上しつつあることを改めて示す事件だった。

 ブカレストのFBIオフィスの責任者、ガブリエル・バーガー氏は「ルーマニアは、サイバー犯罪分野では指折りの発生源だ」と述べている。同氏はまた、ルーマニア当局と共同で、容疑者逮捕や「サイバー犯罪版の同時多発テロの回避」に取り組んでいる。

 AP通信が入手した捜査当局の資料には、ルーマニアの若者たちの人的ネットワークが、緊密に組織されてこそいないものの攻撃性を増しつつあり、ヨーロッパ諸国や米国の仲間とぐるになって、一般の消費者や企業から毎年何百万ドルもの金を奪っている状況が記されている。

 彼らが得意としているのは、消費者を相手に偽のオンライン取引を仕掛ける詐欺、企業のシステムに侵入して現金を要求するといった脅迫、そしてコンピューターを動作不能にするワームやウイルスの作成や配布だ。

 警戒感を強める当局は、南極研究センターの事件を、サイバー犯罪の世界に新たに参入したルーマニア人犯罪者が世界に与える影響を浮き彫りにしたものととらえている。

 米国に本部を置く『 http://www.ifccfbi.gov/index.asp インターネット詐欺苦情処理センター』(IFCC)も、最近発表したレポートで「ルーマニアの芳しくない雇用状況に不満を抱えるコンピューター専攻の学生が、世界最高レベルの才能を持ちながら、その才能をサイバー犯罪に悪用してしまっている」と述べている。IFCCは、FBIと『 http://www.nw3c.org/ 全米ホワイトカラー犯罪センター』(NW3C)が共同運営する組織だ。

 ルーマニアでコンピューター犯罪が横行したのは、今年になるまでサイバー犯罪を取り締まる法律がなかったためだ。最も厳しいと思われるこの新法では、有罪になると最長15年の禁固刑——強姦罪の最長刑期の2倍以上——が課せられる。

 元プログラマーで現在は国会議員を務めるバルジャン・パムバキアン議員は、この新法の草案づくりに協力した1人だ。ルーマニアは、2007年までの欧州連合(EU)加盟を目指しており、インターネットに関して悪評が立っていることに政府が危機感を持った結果だった。

 「国の評判はよいものであってほしい。私自身、ルーマニアが野良犬やストリートチルドレン、あるいはハッカーなどといった、忌まわしいもので有名になっていることを非常に腹立たしく思っている」とパムバキアン議員は述べた。同議員によると、新法発効後3ヵ月で、犯罪行為の件数は著しく減ってきたという。

 また、FBI、米財務省秘密検察局(シークレット・サービス)、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)、米郵便物検査局、およびヨーロッパ各国の警察当局が先ごろ実施した合同捜査では、60人余りのルーマニア人が逮捕されている。

 この中には、5月の南極研究センターに対する脅迫事件の容疑者2人も含まれている。2人は現在、裁判を待っているところだ。ほかには、 http://www.integritymedia.com/ 米インテグリティー・メディア社(本社、アラバマ州モービル)から3月にクレジットカードの情報を盗みだし、その後同社を脅迫して現金を奪った疑いで逮捕された2人組もいる。

 警察によると、逮捕されたハッカーの中には、それほど重大ではない事件に関して容疑を認めているものもいるという。

 オンラインを使った脅迫といえばロシア人のほうが有名だが、ルーマニア人もこの犯罪分野の主役級になってきている。また、ブルガリア、ポーランド、およびスロベニアの犯罪者たちが得意とする分野でもある。

(10/27に続く)

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