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2003年10月21日(火) 18時00分

皮下埋め込み式の新たな男性向け避妊法WIRED

 コウノトリが予期せぬ赤ん坊を運んでこないようにする手段の多くは女性が用いるものだった。しかし、男性向けの避妊法についても、長期にわたって使用可能で、しかも不要になった場合には元の状態に戻すことも可能な手段が開発されつつある。

 現在、男性向けの一般的な避妊法はコンドームとパイプカットだけと悲惨なぐらい少ない。

 それに対して、女性の選択肢は非常に多い。ごく一部を挙げるだけでも、ペッサリー、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030306207.html スポンジ(日本語版記事)、子宮内避妊具(IUD)、ピル、子宮頸部キャップ、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20010621305.html 緊急避妊薬の「モーニングアフター」ピル(日本語版記事)、皮下埋込み式避妊薬『ノルプラント』、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20010622306.html 3ヵ月に一度ホルモン薬を注射する『デポ・プロベラ』(日本語版記事)、排卵検査薬、女性用コンドーム、フォーム(泡)、ゼリー、座薬、不妊手術とさまざまだ。

 しかし、男性側の選択肢も増えようとしている。皮下埋め込み式の男性ホルモンを使った避妊法が現在試験段階にあるからだ。

 この避妊法は、女性用のホルモンを使った避妊法とほぼ同じ仕組みで働く。女性の場合は、エストロゲンとプロゲスチンという女性ホルモンを使って排卵を食い止め、妊娠を防ぐ。これに対して男性版では、男性ホルモンのテストステロンとプロゲスチンを使って精子の生産をストップさせる。

 『 http://www.rei.edu/ ハーバーUCLA研究教育機関』(REI)で教授を務めるクリスティーナ・ワン博士の説明によると「これらのホルモンは、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンという別の2つのホルモンの脳からの分泌を抑制する働きがある」という。

 「黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンが抑制されることで、精巣の機能や精子の生産が抑制される」とワン博士。

 さらに、ワン博士によると「テストステロンとプロゲスチンは別々に皮下埋め込みを行なう。お互いの効果が相殺されるといけないので、両者は混合して投与できない」とのことだ。

 それぞれのホルモンは2本の http://www.wired.com/news/images/0,2334,60758-9163,00.html 直径2mm、長さ45mmの棒(写真)のかたちで、腕の皮下に埋め込まれる。埋め込みには約15分かかり、局部麻酔が必要だ。

 「この皮下埋め込みの効果が出るまで12週間かかり、逆に摘出してから精子数が正常値に戻るまで12週間かかる」とワン博士。

 テストステロンは1年ほどで交換が必要なのに対し、プロゲスチンは最高で5年ほど持続する。

 研究過程でワン博士は、この避妊法を行なう男性が施術前と同程度の筋肉と性欲レベルを維持できるだけのテストステロンをどうやって確保するかという問題にぶつかった。

 ワン博士の研究に資金を提供した『 http://www.conrad.org/ CONRAD(避妊法研究開発)プログラム』で委託研究責任者を務めるダグ・コルバード博士は「この方法では精子の生産をストップさせるために、テストステロンの分泌を元から断つ。しかし、体内を循環するはずだったテストステロンの代わりになるものは必要だ」と語る。

 「必要なテストステロンは、男性のおおよその分泌量である1日当たり7ミリグラムで、天然テストステロンを使って、皮下埋め込みからこれだけの量を分泌させるのは不可能だ」とワン博士は言う。

 この問題を解決するため、ワン博士は『MENT』(7a-メチル-19-ノルテストステロン)という天然テストステロンを濃縮合成したものを使用することにした。

 現時点の臨床試験結果は非常に有望で、精子数は非常に少ない数字に抑えられているとワン博士は語る。ワン博士はこの方法は女性のピルと同じぐらいの避妊効果があるものと考えている。

 しかし、ホルモンの使用に関して不安を覚える研究者もいる。

 避妊法の専門家の http://www.uic.edu/index.html/ イリノイ大学シカゴ校のドン・ウォラー教授(薬理学・毒物学)は「ホルモンを用いる場合、つねに中毒作用や副作用が起きる可能性に配慮する必要がある」と懸念を述べる。

 「ホルモンは制御が非常に難しい。ねらったところに届けることが問題になる。ホルモンには1つの組織だけでなく他の多くの組織に作用する傾向があり、ねらった部位に送り込むことはとても困難だ」とウォラー教授は説明する。

  http://www.medecine.uottawa.ca/eng/index.html オタワ大学医学部助教授のロナルド・ワイス博士も同意見だ。

 「ピルの服用でも、皮下埋め込みでも、治療に使われたホルモンが全身を巡る場合には、必ず身体全体に影響を及ぼす」とワイス博士。

 ワン博士は、今回の臨床試験ではニキビが出たり体重が増加した以外に顕著な副作用はなかったとしているが、まだ研究期間が短いことは認めている。

 「今後の目標は効果のある最低投与量——テストステロンとプロゲスチンの量を最小限に抑えつつ、精子の生産を抑える効果が発揮できる量——を見定めることだ」とワン博士。

 ウォラー教授も同意見で「投与量と持続期間に関しては課題が多い。皮下埋め込みは、長期間にわたって徐々にホルモンを放出するため、ピルよりすぐれている可能性がある」と述べている。

 男性不妊の専門家で、ロサンゼルスの精子バンク『 http://www.cryobank.com/ カリフォルニア・クライオバンク』で医療責任者を務めるキャピー・ロスマン博士は、女性の場合、何年もホルモンを服用していても異常は見られないと指摘する。

 「ホルモンの使用を嫌がる男性がいるかもしれないが、夫が服まなければ妻が服むことになる——つまりこれは、男性と女性どちらが使うかという二者択一の問題なのだ。男女が1年ごとに使用するというのが望ましいかたちなのかもしれない」とロスマン博士。

 しかし、女性たちがピルをゴミ箱行きにするのはまだ早い。男性向け皮下埋め込み避妊法はまだ研究の途中で、ホルモンの適切な投与量を模索している段階だからだ。ワン博士はこの方式が処方薬として出回る段階に至るにはあと7年はかかりそうだと述べている。

[日本語版:高橋達男/長谷 睦]日本語版関連記事

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