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2003年10月17日(金) 06時08分

ヤミ金口座を事実上凍結 没収保全命令で初めて起訴前に朝日新聞

 出資法違反(高金利)容疑で神奈川県警の内偵捜査を受けていた貸金業者の銀行口座が、預金の引き下ろしをできないようにする没収保全命令を受け事実上凍結されていたことが16日、分かった。県警の請求に、横浜地裁川崎支部が業者と銀行に命令を出した。起訴前に貸金業者の口座を事実上凍結するのは初めて。脅迫的な取り立てなどで「ヤミ金融」が問題化する中で、被害金を保全することが目的だ。

 県警によると、没収保全命令を受けたのは川崎市内の貸金業宮崎新平容疑者(24)の口座。県警が16日、出資法違反と貸金業法違反(無登録営業)容疑で逮捕した。「(口座に)犯罪被害財産が含まれている可能性は否定できない」と、横浜地裁川崎支部が7月上旬、県警からの請求を認めて保全命令を出した。

 調べでは、宮崎容疑者は東京都港区などで無登録の貸金業を営み、01年11月から今年3月にかけて、山梨、兵庫、福岡などの7人に、10回にわたり計約40万円を貸し付け、法定利息の約34〜100倍にあたる約37万円の利息を受け取った疑い。

 県警によると、法定利息を超えた不法収益を含むとみられる債務者からの返済金が、宮崎容疑者とは別人名義の銀行の普通預金口座に、いったん振り込まれた。昨年1月から11月にかけて、そこから宮崎容疑者が引き出し、直後に同じ額を自分名義の銀行の定期預金口座に8回にわたって入金したのを、出入金記録と銀行の防犯カメラの映像などで確認。ヤミ金融で得た不法収益が入金されている可能性が高い、と県警は判断した。

 これを受け、地裁支部は宮崎容疑者名義の定期預金口座の約2900万円のうち、少なくとも4万円が出資法上の犯罪収益にあたると認定した。保全命令により、定期預金の解約ができなくなり、事実上、口座は凍結された。

 県警は5月末、出資法違反容疑で宮崎容疑者の事務所を捜索、銀行の預金通帳などを押収した。債務者からの振込先とみられる別人名義の通帳もあり、それまでに約2億5千万円の入金が記録されていたが、すでにほとんど残高はなかったため、この口座については没収保全請求しなかった。

 県警などによると、ヤミ金融をめぐっては、捜査当局が証拠を固めている間に業者が口座を変えるなどし、立件した時には違法に集めた利益を保全できない例が多い。

 ヤミ金融の場合、摘発を免れるために無関係の人物名義の口座を返済金の振込先に指定することが多く、業者との関連の特定が困難だ。犯罪で得た資産隠しなどを防ぐため、起訴前に裁判所が没収保全命令を出すことは可能とされるが、捜査当局は請求に慎重だった。

 弁護士らでつくる「全国ヤミ金融対策会議」代表幹事の宇都宮健児弁護士は「この手法が広がれば、ヤミ金融は割に合わないと知らしめることができる」としている。

    ◇    ◇

 <没収保全命令> 00年2月に施行された「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織的犯罪処罰法)の規定により、警察や検察の請求、裁判所の職権で起訴前でも、暴力団などの資金源を断つために命令を出し、財産処分を禁止できる。麻薬特例法違反事件では、証拠となる薬物が処分されないように使われている。出資法違反事件で起訴前の命令は初めて。(10/17 06:08)

http://www.asahi.com/national/update/1017/013.html