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2003年10月16日(木) 12時46分

テレ朝ダイオキシン訴訟、農家側が実質逆転勝訴読売新聞

テレ朝日ダイオキシン訴訟で最高裁判所に入る農家の人たち    テレビ朝日系の報道番組「ニュースステーション」が、埼玉県所沢市産の野菜から高濃度のダイオキシンが検出されたと報道したことで、野菜の価格が暴落したとして、所沢市内の農家29人がテレビ朝日に計約2600万円の損害賠償と謝罪放送などを求めた訴訟の上告審判決が16日、最高裁第1小法廷であった。

 横尾和子裁判長は「番組の重要部分が真実であるとの証明はない」として、農家側敗訴とした1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。判決は5人の裁判官一致の結論。

 問題となったのは、1999年2月1日に放映されたニュースステーションの特集。東京都内の民間調査会社「環境総合研究所」のデータを基に、所沢産の野菜から1グラム当たり0・64—3・80ピコ・グラム(ピコは1兆分の1)の高濃度のダイオキシンが検出された、などと報じた。ところが、その後、最高値の3・80ピコ・グラムを示したのは野菜ではなく「せん茶」で、テレビ朝日はこれを知らないまま放映していたことが判明。訴訟では、報道の重要部分が真実と言えるかどうかが最大の争点となった。

 第1小法廷は報道の重要部分について、1審・さいたま地裁、2審・東京高裁の判断とは異なり、「ホウレン草など所沢産の葉物野菜が全般的に高濃度のダイオキシンに汚染されているという事実」と指摘。そのうえで、「この放送を見た一般の視聴者は通常、葉物野菜にせん茶が含まれるとは考えない」と認定した。

 1、2審は、所沢産のハクサイから同レベルのダイオキシンが検出されたという別の調査結果が存在することなどを理由に、「報道は真実」と判断したが、最高裁は「調査したハクサイの採取場所が不明確なうえ、検査対象も1つだけで、真実の証明にはならない」と結論づけた。

 また、第1小法廷は判決の中で、「テレビの報道番組は新聞記事などと異なり、視聴者が音声や映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされる」と、テレビの特殊性を指摘。そのうえで、テレビ報道の名誉棄損の有無を判断するには、「一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とし、番組の構成や出演者の発言だけでなく、効果音やナレーションなど放送全体から受ける印象などを総合的に考慮すべきだ」と述べ、最高裁としての初判断を示した。

 一方、ダイオキシン問題の報道自体については、泉徳治裁判官が、「根源的な問題は廃棄物焼却施設の乱立にあり、生活環境の保全を訴える一連の報道の意義は評価できる」との補足意見を述べた。

 ◆「誤解与えたのは反省」テレビ朝日局長◆

 テレビ朝日の中井靖治常務報道情報局長は東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「当社の主張が認められず残念」とのコメントを読み上げた。所沢周辺の焼却施設が撤去されたり、ダイオキシン対策法が施行されたりしたことを、報道による問題提起がきっかけだったとし、「一定の成果があった」と強調する一方、「テレビの映像、音声の印象は強い。誤解を与えたのは1つの反省材料」とも述べた。

 ◆「手段選ばぬ報道、許されない」原告団長◆

 「本日の判決は我々が何度読んでも納得できなかった高裁と地裁の判決を破棄するもので、大変うれしく思う」。判決後、東京・大手町のJAビルで会見した原告団長の金子哲さん(53)は目を潤ませながら、用意した紙を読み上げた。そして、「公益目的のために手段を選ばず、報道することは許されない」と、テレビ朝日側を改めて批判した。

 長島佑享弁護団長も、「最高裁でようやく社会正義が通った。まだ終わった訳ではないが、差し戻し審でも我々の主張が認められると思う」と話した。(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031016-00000003-yom-soci