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2003年10月16日(木) 12時28分

ダイオキシン報道、テレ朝の勝訴破棄 最高裁が差し戻し朝日新聞

 埼玉県所沢市産の野菜がダイオキシンに汚染されているとテレビ番組「ニュースステーション」で報道され、野菜価格が急落したとして、同市の農家がテレビ朝日に損害賠償と謝罪を求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は16日、放送内容が名誉棄損にあたるかどうかについて「一般の人の視聴の仕方を基準に、放送全体から受ける印象なども総合的に考えて判断すべきだ」とする基準を示した。そのうえで、「今回の放送内容が真実だったとは証明されていない」と指摘。農家側の請求を退けた二審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻す実質的なテレ朝側敗訴の判決を言い渡した。

 テレビ放送をめぐる名誉棄損訴訟で最高裁が基準を示したのは初めて。

 この問題をめぐってはテレ朝が99年2月、環境総合研究所(東京都品川区)の実験で所沢市産の「野菜」から1グラムあたり0.64〜3.80ピコグラム(ピコは1兆分の1)の高濃度ダイオキシンが検出されたと報道。直後から所沢産のホウレンソウの販売をやめるスーパーが続出し、野菜の価格が半値以下に急落した。

 テレ朝はその後、3.80ピコグラムを検出したのは煎茶(せんちゃ)だったと認め謝罪したが、農家側は、放送で損害を受けたとして、テレ朝と同研究所を提訴した。

 一審・さいたま地裁は01年5月、他の研究機関の調査で白菜から同程度の高濃度が検出されていることを踏まえ、「主要部分は真実で不法行為は成立しない」と述べて農家側敗訴とし、02年2月の二審・東京高裁もこれを支持した。

 これに対し、第一小法廷は、番組の全体的な構成や映像の内容、出演者の発言などに照らし、放送の重要部分は「所沢産の葉物野菜が全般的に高濃度のダイオキシンに汚染されている」という部分だと位置づけた。そして、「他の研究機関がわずか1検体の白菜から似た濃度の値を検出したからといって、全般的に汚染されていることが真実だという証明にはならない」と結論づけた。「視聴者は葉っぱものに煎茶(せんちゃ)が含まれるとは考えないのが通常だ」とも指摘した。

 ただ、第一小法廷の泉徳治裁判官は「農家の人々が被害を受けたとすれば、その根源的な原因は廃棄物焼却施設の乱立にあることにも留意する必要がある」と補足意見を述べ、「公害の源を摘発し、生活環境の保全を訴える報道の重要性は改めて強調するまでもない。テレ朝の報道の全体的な意義を評価することに変わりない」と付言した。

 差し戻し審で真実が証明されない場合は、農家が実際に受けた損害の程度などが審理される。

 当初は農家376人が原告に名を連ね、総額約2億円の損害賠償などを請求。二審判決の時点では41人に減り、上告審では29人が1人あたり20万円の慰謝料と野菜が売れなくなった分などの損害の計約2600万円の支払いを求めていた。

 番組に所長が出演し、調査データを提供した環境総合研究所については上告を棄却する決定が出ており、同研究所側の勝訴が確定している。

    ◇

 一、二審判決などによると、99年2月1日放送の番組は、ダイオキシン濃度の調査結果のデータを提供した環境総合研究所長と久米宏キャスターが問答。所長は「葉っぱもの」と指摘したが、久米キャスターは「野菜」と繰り返した。説明板も「野菜のダイオキシン濃度」と書かれていた。

 研究所は検体提供者への配慮からテレビ朝日側に個々の品目を伝えず、「所沢産農産物から検出された値」とした。ダイオキシン濃度の数値を伝えることも、放送直前に急きょ決まったことだった。打ち合わせ時間が十分なかったため、スタッフや久米キャスターは「問題の品目は野菜」と誤解したまま本番を迎えたという。(10/16 11:14)

http://www.asahi.com/national/update/1016/012.html