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2003年10月03日(金) 00時00分

サリドマイド 薬害の過ち繰り返すな 東京新聞

 薬害を起こしたサリドマイドを抗がん剤として使う以上、安全性を最優先すべきである。だが、実際にはずさんな管理がまかり通っている。薬害の再発を防止するには厳格なルールが必要だ。

 サリドマイドを個人輸入し、血液がんの一種・多発性骨髄腫(こつずいしゅ)の患者らに投与した経験のある医師を対象に厚生労働省が行ったアンケート結果をみると、寒けすら覚える。

 サリドマイドは一九五〇年代から六〇年代にかけて世界十数カ国で睡眠・鎮静剤として発売されたが、服用した妊婦から手足の一部が欠損した障害児が多数生まれ、国内の製薬企業は一九七一年に医薬品の承認を返上している。

 それが再び注目されているのは、有効な治療法がない多発性骨髄腫の進行をとめ、病状を改善するとの研究報告が海外で出始めたからだ。

 日本では現在、未承認薬のため、医師が海外から個人輸入し、患者に投与している。かつての悲惨な薬害を省みれば、当然、徹底的な安全対策がとられていると思われていた。

 だが、アンケート結果はこれを裏切るものだった。例えば、飲み残しの薬剤を「全員から回収している」のは44%しかない。保管・管理も徹底しておらず、医療機関の薬剤部や治験管理室できちんと管理しているのは42%で、「自分の机・ロッカー」での管理が28%もあった。手足の欠損などの副作用を「よく知らない」と回答した医師さえいた。

 このようなずさんな管理・使用では薬害が再発しかねない。

 未承認薬ゆえに薬事法による規制がなく、承認薬なら製薬企業から当然提供されるはずの危険性に関する情報がない以上、国内の製薬企業に働きかけて治験を行い、医薬品として承認申請をしてもらうのが筋である。しかし、どの企業もイメージダウンを恐れて乗り気ではない。

 その中で次善の策として個人輸入を引き続き認めるならば、厳格なルールを設けなければならない。

 厚労省は、使用基準や患者からの文書での同意の取得、施設内の倫理審査委員会での手続き、医療機関・家庭での保管・管理の徹底などを盛り込んだ指針づくりを本年度中に関係学会に求めるが、これでは悠長すぎる。

 指針づくりは学会任せではなく厚労省主導で早急に行うべきだ。また、サリドマイドの個人輸入は、登録された医療機関の医師に限定する必要がある。輸入量の報告の義務づけも検討すべきだ。サリドマイド被害者は安全性が確保される限り、使用に反対していない。厚労省はこれに真摯(しんし)にこたえなければならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031003/col_____sha_____003.shtml