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2003年10月03日(金) 00時00分

予算で読み解く『小泉改革』 歳出減 『痛み』『自立』迫る 東京新聞

 小泉構造改革はどこへ向かうのか−。スローガンを繰り返すだけの小泉純一郎首相に比べ、雄弁に改革の方向性を示すのが国の予算だ。小泉内閣が編成した二〇〇二、〇三年度の当初予算のうち、三つの項目を取り上げて小泉改革を読み解く。 (政治部・渡辺隆治)

■公共事業費

 森内閣が編成した〇一年度予算と比べ、最も劇的に変わったのは公共事業費だ。〇二年度は前年度比10・7%減と大なたを振るい、さらに減らし続けている。

 地方に公共事業をばらまいても、波及効果は薄く、借金が増えるばかり。それなら、歳出構造を見直し、成長が期待できる分野に予算を回した方が効率的との判断だ。

 選挙の票と予算を通じて、与党と建設業界がもたれ合ってきた「土建国家」を見直す改革でもある。

 しかし、地方経済を支えてきた公共事業のパイプが急に絞られたため、倒産や失業といった「痛み」を生んだ。

■社会保障費

 医療や年金などの社会保障費は、高齢化社会の進展による自然増が避けられない。厚生労働省の見通しでは、〇二年度は自然増一兆円とされたが、診療報酬引き下げによる医療費削減などで三千億円圧縮。〇三年度も、雇用保険制度の見直しと年金支給額の物価スライド制実施で伸びを抑えた。

 首相は〇二年度の医療制度改革で、健康保険組合と医者、患者に負担増を求める「三方一両損」を提唱。〇四年度の年金制度改革でも、給付年齢引き上げに言及するなど、国民負担増も辞さない姿勢を鮮明にしている。

■三位一体改革

 地方交付税交付金と補助金の見直し、税源移譲の三つを同時並行で進めるのが三位一体改革だ。小泉内閣は、〇四−〇六年度で約二十兆四千億円(〇三年度)の補助金を四兆円削減し、そのうち八割の税源を地方に移す方針を打ち出した。

 国のヒモ付き財源の割合が減れば、自治体の判断で実情に即した行政サービスを提供することができる。その半面、自治体間でサービスに格差が生じるのは必至で、破たんする自治体が出る可能性さえある。

 首相は、自治体にも「経営努力」を迫ろうとしている。

■経財諮問会議議員 本間・阪大教授に聞く

 小泉改革の司令塔、経済財政諮問会議で議員を務める本間正明・大阪大教授(財政学、公共経済学)に聞いた。

 ——小泉構造改革を簡単に説明してほしい。

 グローバル化や金融ビッグバンなどの環境の変化に対応して、官がはしの上げ下ろしまで指導する経済から、民間が創意工夫を発揮し、地域が自立した国民主役の経済に変えることを小泉改革は提案している。

 ——具体的には。

 (国際競争力が)強い部門を拡大する一方、過保護で優遇されてきた部門を再生させる。また、郵貯や簡保を通じて公的部門に資金が集まる流れを変え、民間に資金が流れるようにする。

 ——弱者は切り捨てられるのでは。

 生産性が低いのに優遇されてきた人たちにとって、予算削減などで苦しい状況になることは起こり得る。最も気にしているのは、構造改革が雇用や地域経済に及ぼす負の部分だ。今後の大きな政策の柱として対応するよう首相に求めたい。

 ——改革は実際のところ進んでいるのか。

 「骨太の方針」などの文書に書き込めたのは全体の八割。実行できたのは、その半分。ただ、各国とも改革を仕上げるのに十年はかかっている。

 ——首相の指導力が足りないとの批判もある。

 歴代で一番の仕事師内閣といわれる中曽根内閣と比較しても、規模と範囲の広がりは比べものにならない。ただ、首相は独裁者ではない。戦前から出来上がったシステムを一朝一夕に破壊できるわけではなく、段階的に進めざるを得ない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031003/mng_____kakushin000.shtml