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2003年09月30日(火) 00時00分

中国毒ガス放置 国に責任 東京地裁、初の判断 東京新聞

 旧日本軍が戦中戦後に中国に遺棄した毒ガス弾や砲弾で死傷した中国人の被害者らが、事故は日本政府が兵器の回収を怠ったため起きたとして、国に総額約二億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十九日、東京地裁であった。片山良広裁判長は「日中国交回復後も、遺棄場所や処理方法を中国政府に情報提供する義務を怠ったのは、違法な公権力の行使に当たる」と述べ、国に計約一億九千万円の支払いを命じた。 

 ■1億9000万円賠償命令

 旧日本軍の毒ガス兵器をめぐり、国の違法性を認めた判決は初めて。中国には戦後、約七十万発(日本側推定)が遺棄されたとされ、八月にもチチハル市で毒ガスによる死者が出ており、今後の補償問題にも影響を与えそうだ。

 訴えていたのは、びらん性のマスタードガスによる中毒の後遺症で夫の肖慶武さん=事故当時(42)=を亡くした黒竜江省の孫景霞さんら被害者七人と遺族六人の計十三人。

 判決によると、肖さんらは一九七四年十月、河川しゅんせつ作業で誤って毒ガス弾を引き揚げた際、びらん性ガスを吸って亡くなった。この事故で、他の原告二人も皮膚がただれたり、両手が不自由になったりする障害を負った。八二年には、下水道工事中の毒ガス流出事故で、四人が歯が抜けるなどのけがを負い、九五年には道路工事中に砲弾が爆発して二人が死亡、一人が重傷を負った。

 片山裁判長はまず、国が事故を予見できたかどうかを検討。「毒ガス兵器などが川に投棄され、地中に埋められていたのだから、住民らの生命や身体に対する差し迫った危険があった。関係者の話や資料から遺棄の状況を相当程度把握することは可能で、旧日本軍が終戦時に駐屯していた付近では、危険は予見可能だった」と認定した。

 さらに「国が遺棄兵器の隠し場所や処理方法など具体的な情報を提供すれば、中国政府の調査や回収を促し、より早く多くの兵器が発見され安全に処理されていた可能性がある」と指摘。「国は中国に情報提供し、被害を防ぐ対策を講じてもらう義務があった」としたうえで、こうした措置が可能になった「一九七二年の日中国交回復後、事故が起きるまで義務を果たさなかった」と結論付けた。

 中国に遺棄された毒ガス兵器をめぐっては、東京地裁の別の裁判部が今年五月、「国には主権の及ばない中国で毒ガス兵器を回収したり、所在を調査したりする義務はない」として、原告側の請求を棄却していた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20030930/mng_____sya_____006.shtml