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2003年09月28日(日) 00時00分

『定期付き終身保険』めぐり官民『保険戦争』  東京新聞

 日本郵政公社が簡易保険で、民間生保各社の「定期付き終身保険」に類似した商品を来年一月から発売する計画を打ち出したことに生保業界が「民業圧迫」と猛反発している。折しも小泉純一郎首相の再選で郵政民営化論議が国政の重点に浮上。「新商品」を擁護する麻生太郎総務相に対し竹中平蔵金融・経財相は反対の「のろし」を上げ、郵政民営化論議の前哨戦の様相を呈している。契約者そっちのけで始まった官民「保険戦争」の行方は−。 (経済部・花井勝規、安藤美由紀、上田融)

 ■〒激やせ論争

 今月十八日、郵政公社が「新商品」の発売計画を発表すると森田富治郎・生命保険協会長(第一生命保険社長)は翌日すぐに公社に乗り込んだ。「新商品は民間経営に重大な影響を及ぼしかねず、容認できない」。猛抗議する森田会長に、郵政公社の生田正治総裁は「新規契約の急減で事業が“激やせ状態”にある。民業を圧迫する意図はない」と説明するばかり。押し問答のまま会談は終わった。

 郵政公社としては超低金利の影響で、簡保の「主力商品」だった養老保険などの貯蓄型保険の魅力が薄れ、新規契約件数が減り続けている。ことし四−七月の簡保の新規契約高は前年比約二割減。「このペースが続けば簡保事業の生存権が確保できなくなる」(生田総裁)との危ぐが、新商品投入に走らせた。

 ところが、総資産は過去十年で生保が28%増だったのに対し、簡保は約二倍増。森田生保協会会長は「激やせどころか“激太り”ではないか」と憤慨する。

 特に、生保にとって定期付き終身保険は新規契約高の半分近くを占める商品の「柱」。公社の新商品はもろに競合しかねない。生保業界は運用利回りの低下による契約利回りとの「逆ざや」の重荷で、「危ない生保」のうわさが絶えない状況。

 ある中堅生保の幹部は「国の保証をバックにした郵政公社に契約が流れ始めれば、経営悪化が一気に表面化するところも出るのでは」と警戒する。

 ■〒政府も二分

 公社の「新商品」をめぐっては政府内も真っ二つだ。公社を監督する麻生総務相は「商売なんだから競争は当たり前。生保業界の批判は言いがかりだ」と公社の擁護論を展開。法令上の問題がない限り、二カ月後には公社に認可を下ろす構えだ。

 これに「待った」をかけようとしているのが竹中金融・経財相。小泉首相が掲げる郵政民営化の具体案のとりまとめ役を担当する竹中氏は「官業の民間への開放が必要」が持論。「民業と競争条件をそろえるのが当然の前提条件。総務省はそうした観点からきちっと対応してほしい」と不快感をあらわにする。

 生保の連鎖破たんを心配する金融庁の高木祥吉長官も「一部の人だけが得をするのでは、金融市場は健全に発展しない」と足並みをそろえる。

 ■〒最終判断は?

 簡保は民間が大口の高額商品しか扱っていなかった戦前に成立。国家保証の信用力や税負担の免除を武器に拡大してきたが、これまでは貯蓄型の商品が主力で、民間と何とかすみ分けてきた。

 そうした勢力図を書き換えかねない今回の新商品投入に公社が踏み切らざるを得ない背景には集めた資金が大きくなりすぎ、金利のわずかな変化が、大きな損失に直結する簡保事業の実態がある。いまや簡保と郵貯を合わせると、約千四百兆円にのぼる国民の金融資産の四分の一近くを吸収する。資金の貸付先は政府の特殊法人や国債など「官の経済」。この構造が株式市場など民間経済に十分なお金が回らない要因の一つになっているともいわれる。

 就任直後の会見で郵政民営化を選挙公約にすべきでないと発言、民営化への姿勢が揺れる麻生総務相が、どんな最終判断を下すのか。経済財政諮問会議を舞台に始まった郵政民営化論議の行方も左右することになるのは間違いない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030928/mng_____kakushin000.shtml