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2003年09月27日(土) 14時05分

社説1 郵政公社、業務拡大より民営化が先決日経新聞



 小泉改革の柱の一つ、郵政事業の民営化の方向が一向に定まらない。首相は民営化を掲げて自民党総裁選に圧勝したが、麻生太郎総務相が民営化方針の言を左右にするなど、党内どころか、閣内の足並みの乱れが早くも露呈した。その一方で、国営郵政公社の業務拡大に勢いがついてきたのはどう考えればよいのか。

 郵政公社は民間生命保険会社の主力商品である「定期保険特約付き終身保険」の簡易保険版といえる新商品を来年から発売することを決め、総務省に認可申請した。民間生保と同様に新規契約が不振で、バブル期に販売した商品の「逆ザヤ」を抱えるなど厳しい環境にある保険事業のテコ入れという経営上の理由だ。

 生保業界は「民間生保の経営に重大な影響を及ぼしかねない」(生命保険協会)と強く反発している。

 郵政公社はまた、全国の郵便局で投資信託を販売することを前提に、プロジェクトチームで商品構成や社内体制の検討を始めている。政府が「証券市場の構造改革と活性化に関する対応」で、郵便局のネットワークを活用した投信窓販を検討課題に挙げたのがきっかけだ。間接金融から直接金融へ、個人資金の流れを変えるために、証券の販売チャネルを多様化する施策の一環だが、証券業務進出には法改正を必要とする。

 投信窓販の体制を整えて日が浅い銀行業界は「民間活力を阻害し、国による特定企業の業務支援になる」(全国銀行協会)などと反発。投信の売り手を増やす窓販拡大を歓迎する証券業界も、金融庁の監督を受けない郵政公社の参入は証券市場の公正確保・投資家保護に反するという点では銀行業界と一致している。

 郵政事業の民営化による民間との競争条件の統一は古くて新しい問題だが、民営化の内容は(1)現状と大差ない特殊会社から、(2)三事業を維持する完全民営化、(3)郵貯・簡保を廃止する郵便ネットワーク会社まで幅があり、結論は棚上げ状態にある。

 民営化の中身が固まらない現状での国営事業の肥大や業務範囲の拡大は、金融事業の廃止や縮小を難しくして選択肢を狭め、民間移行で得られる利点を少なくして公社内部の経営形態転換の意欲をそぐなど、民営化そのものをゆがめる恐れがある。

 小泉純一郎首相は2005年の法案提出などと悠長なことを言っているのではなく、早急に民営化の議論を再開して結論を出すべきだ。少なくともそれまでは、郵政公社の業務拡大を凍結するのが筋ではないか。時間をかければ、郵政公社の経営陣はじっとしていられなくなる。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20030927MS3M2700L27092003.html