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2003年09月26日(金) 00時00分

揺れる下関ふぐ (中)/高い加工技術信頼競りにかけるフグを水槽から移す市場職員ら=下関市彦島西山町4丁目の南風泊市場で朝日新聞・

  「フグの相場は下関がつくる」。業界にはこんな言葉が「流通」している。下関の影響力の大きさをうかがわせる。

  フグが下関名物となったのは、明治時代、伊藤博文が下関で食べたフグのうまさに、豊臣秀吉以来の禁令を解いたとの故事にさかのぼる。本格化は50年の下関唐戸魚市場の設立から。65年には日韓漁業協定締結で、東シナ海や黄海にはえ縄漁船が出漁し、取扱高が飛躍的に増大。さらに市内に74年、集荷から加工、流通までを一元的に扱う南風泊市場が完成し、地位が確立された。

  ●毒のおかげ

  フグが集まる理由の一つに、仲卸人の加工技術の高さがある。猛毒を持つフグは内臓や皮を取り除く「身欠き」という作業が欠かせない。身の引き締め方から包丁の入れ方、殺菌の工夫……。長年培った技術は企業秘密とされ、今も進化中という。東京の仲卸業者は「身の締まりやつやがほかと全然違う。下関はお手本だ」と高く評価する。

  南風泊市場は、その仲卸人を一カ所に集め、加工量と速さをアップさせた。「市場と加工業者がこの規模で集まるのは下関だけ」と県下関水産振興局。毒があるからこそフグは下関に集まるようになったと言える。

  同市場は200基を超える水槽やいけすを抱え、需要をにらんだ出荷調整も可能。産地から運ばれたフグは競りの前に最低1日はここで泳がされる。胃の食べ物を消化しきることで身を引き締めるのが狙いで、これも下関ブランドの質の高さの秘訣(ひけつ)だ。伊勢湾や遠州灘で水揚げされたフグが、大消費地の東京とは逆向きのトラックで下関まで運ばれるのは、こうした環境がそろうからだ。

  ●落ちたシェア

  だが、ここ十数年で状況は変化した。下関市の統計によると、87年に約1800トンだった天然トラフグの取扱量は、乱獲などで10年後には10分の1に。この間、300トン程度だった養殖トラフグは2千トンにまで増えた。

  「大衆化の立役者は養殖もの」と下関ふく連盟副会長でフグ料理店を営む萩原利生さん(59)。15年ほど前、店のフグをすべて養殖に切り替えた。技術の向上で品質が良くなり、安値で相場と供給量が安定しているため、低価格での提供が可能になったという。

  消費者にはうれしい変化だが、同市場の全国シェアは確実に落ちた。天然は7割以上を保つが、絶対量は減った。逆に増加傾向の養殖は3割程度。大阪の大衆料理店などと産地の直取引が増えたからだ。

  養殖フグのホルマリン使用問題はそんな状況の中で起きた。生産量日本一の長崎県からの入荷が最も多く、下関で扱う養殖フグ2100トンのうち35%を占める。「産地が助けてくれと言うのに、無視したら来年はどうなる」。下関唐戸魚市場の松村久社長は苦渋に満ちた表情でこう続ける。

  「今、相場は産地がつくっているんだ」

(9/26)

http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news01.asp?kiji=3268