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2003年09月24日(水) 00時00分

裁判員制度人数比で対立 主役は市民か裁判官か 東京新聞

 「裁判官が三人もいると、素人の裁判員への影響が強すぎる」「裁判員が多すぎると、議論がまとまらない」。市民が刑事裁判に加わる裁判員制度の設計で、裁判官と裁判員の人数構成がなかなか決まらない。裁判官が主役なのか。市民が主役なのか。設計を担う人たちの対立は解けない。人数比は新制度の性格を決めるだけに、政府の司法制度改革の「お目付け役」も乗り出した。 (社会部・鬼木洋一)

 ●「介入宣言」

 「具体的な数は、裁判員制度の理念に直結する問題だ」。十八日に開かれた政府の司法制度改革推進本部の顧問会議。座長の佐藤幸治・近畿大教授が、おもむろに口を開いた。

 裁判員制度の設計を進めている推進本部の裁判員制度・刑事検討会(座長・井上正仁東大教授)は、裁判官と裁判員の人数比をめぐって、委員の意見が真っ向から対立。佐藤氏の発言はその事態を憂慮したものだった。

 「意見の違いがあれば、どういう理由からなのか。シンプルに紹介してもらって、顧問会議で議論するのは必要なプロセスだ」。昨年二月に検討会がスタートして以降、静観してきた佐藤氏が初めて発した「介入宣言」と周囲は受け止めた。

 佐藤氏は二〇〇一年六月、政府の司法制度改革審議会の会長として、裁判員制度導入を目玉とする意見書を小泉純一郎首相に提出。意見書を受けて発足した推進本部では、各界の有識者がメンバーの顧問会議座長として、制度設計が意見書の理念からズレていないか監視する役割を担っている。

 ●自 民 案

 裁判官と裁判員の人数比をめぐり、検討会の委員らの対立は深い。だが十一、十二両日の検討会の集中討議で、「裁判官は現行通り三人、裁判員は裁判官と同数程度」とする案が有力となっていた。

 検討会の委員は裁判官や検事、学者ら法律家が中心。討議では「現行の裁判に、国民の意見を付け加えるのが、意見書の趣旨だ」と発言する委員もいた。

 この流れに、法曹関係者からは「検討会の論議は、勝手に理念の解釈まで踏み込んでいる。理念を骨抜きにしようというのか」と批判の声も上がった。

 しかし、ここで急浮上してきたのが自民党内の議論だ。

 「裁判官は原則、二人で十分。多様な意見を反映させるには、裁判員は最低六人は必要」という案だ。

 二日に開かれた同党の裁判員制度小委員会(長勢甚遠委員長)の会合では、出席した最高裁幹部が「裁判官三人体制の維持」を訴えたのに対し、「それなら、裁判員が加わる意味がどこにあるのか?」と疑問を投げ掛けた議員もいた。

 ●海外の目

 裁判員制度は日本独自の制度だが、海外の法曹界の関心も強い。

 今年六月、裁判員制度を国際的な視野から考えようと、日弁連が都内で主催した国際シンポジウム。国民の司法参加で「先輩格」に当たる欧米諸国の法律家たちは「裁判員の数は裁判官より多くすべきだ」と口をそろえた。

 参審制を採用しているフランスで、大学教授を兼任する現職検事は「裁判官一人は、三人の市民に匹敵する」。米国のロースクール教授は、連邦最高裁が五人以下の陪審員を認めていないことを紹介。「裁判員が裁判官から支配されれば、今までと何ら変わらない制度になってしまうだろう」と警告した。

 お目付け役の顧問会議が乗り出し、自民党内部では、現状変更を迫る議論が噴出。さらに海外の法曹の目もある。このままでは、検討会の存在そのものが宙に浮きかねない状態だ。

 推進本部は、遅くとも来月中には成案に近い最終試案を示す。

 同本部の事務局は「さまざまな立場があるのは承知しているが、あくまで参考意見と受け止めている。最終的には、政府判断になる」としている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030924/mng_____kakushin000.shtml