悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2003年09月23日(火) 15時08分

韓国で突然の「移民ブーム」 「あっせん」もTV通販で朝日新聞

 韓国で「海外移民」が突然の脚光を浴びている。カナダなどへの移住あっせんが通信販売され、業者による博覧会も大盛況。国を捨てるというマイナスイメージより、よりよい人生の選択肢として堂々と語られるようになった。しかし一方で、中流層家庭のエリート志向が過熱、教育費の高騰に嫌気がさした末の脱出、という社会のゆがみも露呈している。

 ■通販が火付け

 「次の商品は、カナダ移民です」。8月28日深夜、テレビの通信販売で「移民あっせん」が商品として登場した。

 留学・技術研修後に移民資格を取ったり現地に投資して移住したりする制度を指南し、旅費込みパック価格で620万〜2800万ウォン(約62万〜280万円)。事前には風変わりな商品として注目される程度だったが、その人気ぶりで業者やメディアを驚かせた。

 放送直後の80分間で申し込みが約1000件も殺到し、175億ウォン分の売り上げを記録した。今月4日の2回目の放送でも1時間半に3千人近くが応募や相談。申し込み分の530億ウォンはテレビ通販史上、最高額となった。

 今月6、7日にソウルで開かれた第6回海外移住・移民博覧会には35のあっせん会社が参加し、1万5千人の入場者を記録した。主催した「韓国展覧」によると、今春に開かれた同様の博覧会に比べて5割増。移住先の人気はカナダ、米国、豪州の順。ニュージーランドも増えているという。

 通販でも博覧会の入場者でも共通するのは、働き盛りで子どものいる20〜30代が全体の6割近くを占めることだ。「韓国展覧」によると、その大半が「最富裕でも貧困でもない、カネのある中流層」だという。

 移民博に来た子ども2人連れの30代の夫婦は語った。「一番の動機は子どもの教育。塾や習い事の費用が高すぎるし、金をかけないと良い学校に行けない。いっそのこと移住した方が安上がりかと。韓国は政治や経済の先行きも不透明で北朝鮮の核問題も不安。韓国を脱出することにこだわりはありません」

 ■「孟母三遷」が高じて?

 韓国を出る移民全体の数は、軍事政権下の政情不安を反映した80年代のピークから減り、ここ数年は1万人台で大きな変化はない。一方で、中学・高校をやめて移民や留学で海外に出る生徒がここ数年激増している。

 「教育移民」とも呼ばれており、教育人的資源省によると、00年の約6700人から昨年は1万2000人に。今年は上半期だけで昨年分に迫る勢いで、年末には2万人を突破するとみられている。

 もちろん、移住したからといって幸せになれるとは限らない。東亜日報は、カナダや米国に移住した思春期の子どもが環境になじめずに酒や麻薬に手を出したり、心の病にかかったりしたケースを報告している。

 教育にかける情熱が世界でも有数と言われる韓国では今、子どもに大金をつぎ込んで引っ越しもいとわない「孟母(もうぼ)三遷」型の教育偏重による地域格差、不動産バブルが極端な形で表れている。

 その上に所得格差も広がった。97年の経済危機をV字形回復で脱出した後、構造改革で欧米流のビジネスが浸透。不安定層と高額所得層がはっきり分かれるようになった。

 例えばソウル市南部の江南(カンナム)地区。ここで教育熱心な人たちばかりが住むマンションを買い、京畿(キョンギ)高校を出てソウル大学に進学するのが人生の勝利とされる。この地区の大学進学率は市内平均より10ポイント近く高い62%前後で、マンションの価格は暴騰し、政府が投機制限に乗り出すほどだ。

 教育費が出せない家庭は怒りを募らす。朝鮮日報が今月3日に報じた世論調査によると、貧富の格差が「深刻」と答えた人は89%。原因は「不動産の高騰」(90%)「失業問題」(80%)などとともに「不平等な教育機会」が68%に上った。

 ■「失望させたのは国の責任」

 メディアは、中央日報が16日から「新・移民時代」と題する連載を始めるなど、こぞって分析を試みるが、「不可解で情けない現象」という意識がにじむ。

 「30代にとって、韓国は10年後の未来すら保証できない不確実な国なのだ。韓国を離れたい本音は簡単には口にできない。集団的な欲望が、これ以上隠し通せない水準まで達したのを見せつけている」(朝鮮日報)

 「よりましな暮らしを求めて移民を選択するのは仕方がないが、彼らを失望させたのは国の責任だ」(中央日報)

 移民博覧会の主催者の一人、李永鎬(イ・ヨンホ)マネジャーは、こう語る。

 「特に中流家庭は、我が子を他人の子よりもほんの少しでもエリートに育てたい、と必死。生活を犠牲にして、移民まで決心してしまう。他国の人には想像できないでしょうが、社会の主流にとっては今、韓国という国の将来よりも向上心が大切なのです」(09/23 11:53)

http://www.asahi.com/international/update/0923/003.html