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2003年09月20日(土) 00時00分

生保より安い掛け金売りに急成長  無認可共済 東京新聞

 既存の保険会社に比べ、掛け金の安さが売り物で、認可を必要としない新興の共済(根拠法のない共済)の加入者が急増している。長い不況や生命保険会社の予定利率引き下げの動きなどが背景とみられるが、マルチ的な手法で顧客を増やす共済もあり、金融庁は保険業法違反の行為がないか、警戒を強めている。情報公開が不十分のため、経営状態がわかりにくく、国民生活センターへの相談も多くなっている。 (経済部・上田融)

 共済は保険同様、死亡や入院時に保障を得られる商品。保険は保険業法に基づいて金融庁の認可を受けた保険会社が不特定多数に販売できる。これに対し共済は、特定団体の会員や企業など限られた範囲にしか売れない。このため法的な規制を受けていないが、農協系のJA共済のように監督官庁がある「認可共済」と、監督官庁のない「無認可共済」に大別され、無認可の共済は全国に数千はあるという。

 認可のいらない共済の中で最大手とされるのが都内のA社。元外資系生保社長が主導、一九九九年からロードサービス事業の会員を対象に共済を販売している。決算報告などによるとロードサービス事業を合わせた売上高は二〇〇一年度の二十億円から、〇二年度は約五十億円に急伸。共済契約数は今年六月末で約二十七万件に達している。

 同社は「大手生保なら月々四万一千円の支払いが必要な『四十九歳男性の死亡・がん入院・病気入院の保障』が、二万三千円で済む」と安さを強調。人件費、設備費削減で低価格を実現したという。営業職員はおらず、商品販売は契約者が知り合いを勧誘し顧客を増やす方法を採用している。勧誘実績に応じて手数料が支払われるため、この収入目的の加入者も多い。また、損失発生を避けるため「株式などで運用して利ざやを稼ぐ貯蓄性商品ではない」と安全性をアピールする。

 既存の生保は、営業拠点や職員の維持にかかる膨大なコストやバブル期に売り出した高利回り商品が経営を圧迫、商品価格の高騰につながっている。新興の無認可共済はこれらを逆手にとり、業績を伸ばした。A社と類似手法の共済は、千葉県のB社などがある。

 だが金融庁は、これらの業者に疑念の目を向ける。マルチ的な販売手法は不特定多数の人の勧誘につながり、保険業法に抵触する可能性があるためだ。専従スタッフを置き、違反事例がないか警戒を強化している。

 将来性も未知数だ。生保には破たん時、業界が保険金支払いの資金を出し合う「契約者保護機構」がある。だが無認可の共済にはこのような制度はない。監督官庁もなく財務状態は外部には見えない。組織拡大が止まれば手数料収入の支払いも行き詰まり、トラブルが起きる恐れもある。

 一部の無認可共済は「預かった資金は海外の保険会社に再保険の形で預け直しているので安心」と説明するが、イギリスの損害保険会社ロイズなどは五月、「自社の評判に懸念を生じさせる」と、無認可共済との契約に応じないなど距離を置く姿勢を打ち出した。

 保険会社の財務に詳しい坂本嘉輝アカラックス社長は「無認可の共済の中には、収入の大半を手数料などの事業費用に充て、利益がほとんど残っていないところもある。保険はいざという時にならないと価値が分からない商品。将来性も慎重に見極め選ぶ必要がある」と指摘している。

 (メモ)共済

 会社内のグループや職人組合など、一定の枠内の人々がお互いにお金を出し合い、病気や死亡時の保障に充てる助け合い制度。もともと法的なしばりはないが、母体組織の農協の活動が農業協同組合法で定められているJA共済などは根拠法があり、監督官庁が監視。共済破たん時に契約者の被害を少なくするよう責任準備金の積み立て義務などもある。根拠法のない共済(無認可共済)にはそういった決まりはなく、契約者の自己責任に任されている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030920/mng_____kakushin000.shtml