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2003年09月13日(土) 00時00分

「ヒマラヤの雪男」正体はヒグマ東奥日報

写真  長年、ヒマラヤ各地を歩き、謎の動物とされる「イエティ(雪男)」の探索を続けてきた弘前市の登山家・根深誠さん(56)が、「雪男の正体はヒグマの仲間」と結論付けた。根深さんによると、日本語で雪男と訳される動物は、現地では一般に「メティ」と呼ばれ、ヒグマのことを指す。現地住民の畏敬(いけい)を集める存在で、宗教の祭事に取り入れられていた。現地で「メティ」の毛皮を写真撮影した根深さんは「実物はまさにヒグマだった。ゴリラのような雪男像は、昔作られた想像図が人々の意識に定着したものだ」と主張する。根深さんは年内にも調査結果をまとめ出版する。

 日本山岳会青森支部長を務める根深さんは、一九七三年から登山や調査のため、ヒマラヤ各地を歩いてきた。これまでの探検隊が「想像図の雪男」を追い求めたのに対し、全く逆のアプローチでその謎に迫った。「地元の人たちが雪男と呼んでいる動物は一体何なのか」。雪男について、各地に共通する言い伝えや証言があることに着目し、十二年前からネパール、シッキム、ブータン、チベットなど十数カ所を探索、数十人から証言を得るなど、丹念に傍証を積み重ねた。

 根深さんによると、雪男と訳されている動物は、シェルパ語で「イエティ」、現地では一般に「メティ」と呼ぶ。ブータンなどでは「メギュ」、チベットでは「テモ」と言う。いずれも同じ動物で、ヒグマの仲間の「ヒマラヤン・ブラウン・ベア」だった。

 現地の人々の「メティ」像は、「サルとも、黒いクマとも違う」「立ち上がる」「人に似て、毛がたくさん生えている」など、地域によって表現に違いがあった。しかし、皆申し合わせたように「これが『メティ』だ」とヒグマのことを示し、畏敬の念を抱いていた。

 現地の複数の寺院には、「イエティの頭皮」という人造品や「メティの頭」と呼ばれる人骨が安置され、祭事に使われていた。根深さんは「北半球では最強の動物で、人間にとって恐るべき存在のヒグマが、宗教に調伏され、偉大な高僧に仕える立場になった。そのことを祭事で人々に知らしめ、地域社会を支配するために活用したのではないか」と見る。

 根深さんは昨年、標高五千メートル級の峠をいくつも越え、「メティ」の目撃場所を探索した。実物には出合えなかったが、チベット人が売りにきた「メティ」の毛皮を初めて見ることができた。

 毛皮は数年前に射殺されたもので胴体だけで約一・八メートル。頭部を加えると体長は二メートルを超すと思われた。毛は茶色、背中に金色のしま模様があり、まさしくヒグマだった。

 根深さんによると、過去にも、現地住民が各国の探検隊に「メティ」の毛皮を売ろうとしたが、「これはクマ。雪男ではない」と、取り合ってもらえなかったという。根深さんは「なぜ現地の人々の話を信じないのだろう。これまで探検隊は、雪男の正体を暴く機会を逃してきた。固定観念にとらわれ、昔作られたイメージを追い求めているだけだ」と話している。

※写真=現地の人々が「メティ」と称する動物の体から切り離された手(右)と頭(左)。体長2メートルを超すヒグマの仲間だった=根深誠さん撮影

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夢残してほしいが…

大塚博美・前日本山岳会会長の話 約四十五年前に初代の探検隊に参加し、番組も作った。今は時代も変わり、科学的検査の方法も変わった。ネパールにとってイエティは一種の伝説。山の中に行けば話はたくさんある。夢は夢、ロマンを残してほしいという気もある。根深さんはネパールをよく知り、多くの文献も発表してきた。同じ釜の飯を食べた仲間でもある。根深さんが言うのなら、その通りなのだろう。よくやったと言いたい。科学的に裏付けとなるデータが取れれば−と興味がある。

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雪男 ヒマラヤ周辺では、1890年代以降、各国の探検隊などによって未知の動物の足跡の発見例や目撃例が相次いでいる。全身毛に覆われ、二足歩行するというのが共通の動物像だが、その実態は謎とされている。1951年、英国の登山家エリック・シプトンが氷河上の大きな足跡の写真を撮影してから「イエティ」というシェルパの呼称が世界に広まった。54年に、英国のデイリー・メイル紙が組織した探検隊が調査、ゴリラのような想像図を発表してから雪男のイメージが定着した。

http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2003/0913/nto0913_8.html