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■際限なくアシスト 困る!?
「日本サッカーはアジア各国に育ててもらった。恩返しの意味で、スリランカなど十二カ国を支援したい。要望が強いボールを送ってほしい」。JFAが“サッカーODA”を同省に要請した理由だ。ところが「外務省から『スポーツ用品など消耗品はODA対象外だ』と言われ、ボールは外されてしまった」(JFA国際部)と明かす。
支援第一弾として、ボールの代わりにスリランカに支援されるのは、総額六万五千ドル(約七百五十八万円)の視聴覚器材やトレーニング機器だ。同省側の説明では、視聴覚器材は研修施設の合宿などで、青少年がサッカー戦術の研究をするのに使用されるという。
■「柔道着は丈夫日本の国技だ」
同省文化交流部政策課は「ODAは、透明性や援助効果などが問題になっている。維持管理面で十分な期間使用できないと、血税を出した国民に説明できない。スポーツ用品は、個人宅に持ち帰られて紛失したり、破損したり耐用期間が短い消耗品でODAにそぐわない」と説明する。
しかし、柔道着はODA対象になっている。同課は「柔道着は生地が丈夫で破損することも少ない“耐久消費財”だ。しかも柔道は日本の国技だ。文化交流面での貢献も加味され例外扱いになっている」と話す。
お役所の対応に、JFA国際部担当者は「日本が世界的に強い競技が優遇される傾向があるようだ。日本サッカーがもっと強くなれば、用品の支援も可能になるのかな」と残念がる。さらに「ODAでは学校の校舎建設は支援できても、ノートや鉛筆は送れないという。ボールもそれと似た扱いで納得できない。一個のボールがどれだけ青少年の育成に役立つか。粘り強く外務省に働きかけたい」と再チャレンジする考えだ。
ODA事情に詳しい「国際開発ジャーナル」編集長の荒木光弥氏は「ODAには『消耗品は次々要求され、際限なく支援が続くので財政支出が増えるので避けたい』という、財務省の志向が反映されている。スポーツ用品などが敬遠される一方、一回の支援で打ち切ることができる器材類など、耐久消費財が贈与されることになる」と解説する。
その上で「国民の生死にかかわる食料品ならOKでも、スポーツなどは『ぜいたくな遊び』とみてしまう、お役人の思考も壁になっている。スポーツを通じた交流でスポーツマンシップを養えば、発展途上国で頻発する民族対立を緩和できる可能性もある。行政は幅広い効果が分かっていない。前例にとらわれ、ODA対象物を拡大できないところに、官僚の限界を感じる」と厳しく指摘する。
■『1個のボール 国結ぶのに…』
サッカー評論家の大住良之氏は「子どもたちが、十人に一個程度のボールでプレーしている発展途上国もある。それも擦り切れたボールばかりだ。視聴覚器材より、一人に一個のボールが行き渡る支援のほうが有効だ。お役所らしい“すごい支援”だね」と皮肉りながら続ける。
「外務省が心配するように、ボールが持ち帰られても、視聴覚器材よりは活用されるはずだ。日本から来たサッカーボールを手にした子どもたちに、日本への友好心が芽生えることもある。その方が国益にも合致すると思うのだが」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030910/mng_____tokuho__000.shtml