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2003年09月08日(月) 06時00分

乳がん、視触診のみ廃止 厚労省が検診の大幅見直し方針朝日新聞

 見落としが続いている乳がん検診のあり方について、厚生労働省は、視触診のみの検診を廃止して乳房X線撮影(マンモグラフィー)を全面的に導入するなど大幅に見直す方針を固めた。近く専門家を集めた検討会を立ち上げ、今年中に結論を出して全国に通知する。現在、半数近い市町村で、乳房を触ってしこりの有無を調べる視触診のみの検診が行われているが、このままでは見落としが頻発しかねないと、見直しに踏み切った。

 厚労省が00年度にまとめたがん検診の有効性評価では、視触診だけの検診は「死亡率を減らす効果がない」とされた。だが、視触診だけの検診を受けた人は01年度に283万人に上るのに対し、「効果がある」とされるX線撮影と視触診の併用検診を受けた人は45万人にとどまっている。

 産婦人科や整形外科など専門外の医師が視触診検診に携わることが多く、今夏、相次ぐ見落とし例が問題になった。厚労省は、05年度からの老人保健第5次計画を前倒しして、検診を見直す必要があると判断した。

 まず視触診のみの検診については「効果がない」とし、事実上の廃止を求める。この指導は法的根拠はないが、「効果がない」とされた検診を続ける自治体は来年度からなくなるとみている。従来、視触診検診にあたっていた専門以外の診療所などは、検診ができなくなる可能性がある。

 一方、50歳以上を対象としていたX線撮影と視触診の併用検診については、40歳以上に引き下げる方向で専門家の意見を聞く。米国やオーストラリアなどは、X線撮影単独か、視触診との併用を40歳以上の検診に義務づけており、世界的な水準に追いつくことになる。

 なお、30代の検診については、X線撮影よりも超音波(エコー)検査の方ががんを発見しやすいとする専門家もおり、どのような検診にするか、専門家の判断を仰ぐ。

 今後、X線撮影の全面導入には解決すべき問題が少なくない。

 ひとつは技量だ。厚労省は、X線撮影検診について、乳房の撮影にたけた診療放射線技師や画像を分析する読影能力のある医師に限定していく方針だ。

 現在、日本乳癌(にゅうがん)学会などでつくるマンモグラフィ検診精度管理中央委員会が、読影能力の高い医師や撮影技術の高い技師の資格制度を設けている。しかし、技量の高いA、B級の医師、技師は都市部や大病院に集中しており、さらなる有資格者の養成も検討していく。

 また、財政的には1台3千万円以上するといわれるX線撮影の機器をどう整備するかの態勢づくりが課題だ。厚労省は、そのための財源や、市町村の検診費負担などについて、地方交付税を握る総務省との折衝を始めている。新たな財源が必要かどうかも検討する。

    ◇

 <乳がん検診> 乳がんにかかる人は98年度に年間約3万3600人(推計)に達し、女性では胃がんを抜いてトップ。乳がん検診は87年から老人保健法に基づいて義務づけられ、30歳以上を対象に主に視触診が実施されてきた。だが、視触診のみの検診はがん発見につながらないとし、厚労省は98年から法的な義務づけをはずすと同時に、補助金を廃止した。現在は各市町村の判断で実施され、半数近い市町村で視触診のみの検診が続いている。01年度の受診率は12・3%にとどまる。(09/08 06:00)

http://www.asahi.com/national/update/0908/004.html