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2003年09月03日(水) 07時22分

家庭用殺虫剤で健康被害 駆除会社などに賠償命令 盛岡地裁河北新報

 有機リン中毒になり体調を壊したのは、室内に害虫駆除の殺虫剤が残留していたためだとして、盛岡市の元寮母の女性(61)が駆除業者「イカリ消毒盛岡」(盛岡市)と、寮を管理する社団法人電気通信共済会(東京)に、治療費など計約2600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、盛岡地裁であった。高橋譲裁判官は、使われた家庭用殺虫剤との因果関係を認め、慰謝料など約630万円の支払いを命じた。女性側によると、家庭でも一般的な駆除剤による健康被害を認定した判決は極めてまれだという。

 訴えによると、電気通信共済会は1998年3月、盛岡市緑が丘に所有し女性が寮母をしていた独身寮で食中毒を防止しようと、イカリ消毒に厨房のネズミ、ゴキブリ駆除を依頼。同社は市販されている家庭用有機リン系殺虫剤「スミチオン」「エクスミン」を使い、駆除を行った。

 作業後、女性が入室すると、においが強く、薬剤が壁や天井から垂れ落ちていたため布でふき取ったところ、急に体調が悪くなった。盛岡市内の病院で診察を受けた結果、有機リンによる中毒と分かり、筋肉、関節の痛み、集中力減退などの後遺症が残った。

 高橋裁判官は判決理由で「スミチオン、エクスミンは国の認可製品だが、有機リン中毒を発症したケースも報告されている。用法用量によっては人体に悪影響を及ぼすことが分かっており、業者は薬剤の危険性を認識し、十分な対策を施すべきだった」と述べた。

 有機リン中毒はこれまで、血液中のコリンエステラーゼ値が下がったかどうかによって認定されてきた。原告女性のコリンエステラーゼ値に変化は見られなかったが、判決は前例や症状の経緯などから有機リン中毒と判断した。

 イカリ消毒側は「どちらの薬剤も厚生労働省が認可したもので、用法用量を守れば、安全であると確認されている。使用法も問題はなかった」と反論していた。

 原告女性を支援してきた東京の市民団体「反農薬東京グループ」の辻万千子代表は「スミチオンを服毒して自殺した人もいるのに、これまでは危険性が認められてこなかった。盛岡地裁の判決は、家庭で一番使われているスミチオンでも危険性はあると認めた画期的な判決」としている。
[河北新報 2003年09月03日](河北新報)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030903-00000013-khk-toh