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2003年09月03日(水) 17時30分

ハイテクで「武装」する反グローバリズム活動家たちWIRED

 9月10日から14日(現地時間)まで、メキシコのカンクンでは http://www.wto.org/ 世界貿易機関(WTO)の閣僚会議が開催される。この会議のグローバリゼーション政策に抗議する活動家たちは、横断幕やメガホンに加えて、数々の新しいハイテク装備で武装し、メッセージを伝えようとしている。

 現在、映像をテレビ局に配信するピアツーピア・ネットワークや、ウェブログ更新目的のワイヤレス・アクセスポイントの設置といった準備が進められている。抗議行動の呼びかけ人たちによると、こうした準備のねらいは、今までより少ない参加者で、より大きな影響を与えることにあるという。

 『 http://www.indymedia.org/ 独立メディア・センター』(IMC:通称インディメディア)の『ラブル』(Rabble)と名乗る活動家は、匿名を条件に次のように述べている。「テクノロジーは、抗議行動において反体制派が優位に立つ力を与えてくれる。抗議行動の間、信頼できる通信ネットワークを持っているのは警察側だけだった時代とくらべて、戦術的に驚異的な進歩を遂げている」

 WTO閣僚会議の開催期間中、ラブル氏をはじめとする活動家は、『 http://v2v.indymedia.de/ v2v』というピアツーピア方式の映像共有サービスを使って、抗議行動を撮影した一般に放送可能な画質の映像を、テレビ局や他の活動家に中継する計画だ。

 また、活動家たちは近隣のシウダードカンクンという町に設置する抗議活動家受け入れセンターにワイヤレス・ネットワークを開設し、インタビューや演説の録音をストリーミング配信する予定となっている。これは抗議活動に協賛しているラジオ局で、あらためて放送される。

 現代的な抗議行動に使われる手段は増加を続けており、こうしたテクノロジーもその一部だ。その多くは、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/Culture/story/3418.html 1999年11月にシアトルで行なわれ、広く報道されたWTO閣僚会議に反対するデモンストレーション(日本語版記事)の際に初めて使われた。

 「抗議運動家の活動は、つねに技術的に発展してきた。現場で人々を組織し、情報を伝播するためにメーリングリストとウェブ出版が果たしてきた役割の重要性は、1999年以後も減っていない」と活動家のマイク・ボナーノ氏は述べている。

 ボナーノ氏は、さまざまな組織の施策に抗議する方法としてパロディーのウェブサイトを作成する『 http://www.theyesmen.org/ ザ・イエス・メン』という団体のメンバーだ。

 1999年シアトルでの抗議行動の際、イエス・メンはWTOに抗議する『 http://www.gatt.org/ GATT.org』[GATT(ガット)はWTOの前身の組織「関税および貿易に関する一般協定」の略称]というパロディサイトを立ち上げた。同団体はカンクンで閣僚会議が開かれている間、このサイトを更新し続け、WTO政策の欠点を指摘するつもりだという。

 「このウェブサイトを使って、WTOにとって都合よく宣伝された姿ではなく、より真実に近いWTOの立場を提示し続ける計画だ。WTOの政策がどのように貧しい者と環境を傷つけるかを、適度に諷刺を取り混ぜながら解説するというのがつねに、われわれの目標だった」とボナーノ氏は語った。

 WTOからのコメントは得られなかった。

 意外なことに、ハイテクを使った抗議戦術の中でも、WTOウェブサイトを機能停止させる『サービス拒否』(DoS)攻撃は今年のデモンストレーションでは使われない見込みだという。

 1999年のWTO閣僚会議時にDoS攻撃を呼びかけたイギリスの団体、エレクトロヒッピーズはその後、解散している。多数の抗議団体も、今回他の団体が同様の呼びかけを行なったとしても、このような攻撃を支持しないつもりだと述べている。

 「ウェブサイトを機能停止させるのは面白くて、ニュースの見出しになる話題性はあるかもしれない。しかし私個人の意見では、よい戦術ではないと思う。WTOのウェブサイトをダウンさせたからといって、WTOの機能が麻痺するわけではない。WTOの運営が成り立つのは、大企業や各国政府が巨大な権力を与えているからだ」とラブル氏は説明している。

 ほかにも、メーリングリストを使って招集する『 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030623203.html フラッシュ・モブ(日本語版記事)』は使われないとみられる。フラッシュ・モブは、同一の電子メール・メッセージを参加希望者に送信して、大人数の群集を招集する群集イベントだ。

 「『フラッシュ・モブ』のコンセプトは一般的に、電子メールを受信して即座に行動できる人々が大勢いる際に最もうまくいく。このような通信手段が手に入れられない場合はずっと難しくなる」とボナーノ氏は理由を説明する。

 メキシコのインターネット協会『AMIPCI』の報告によれば、定期的にインターネットにアクセスしている人口は、同国民のわずか10%だという。カンクンのあるユカタン半島地域はジャングルに覆われた貧しい地区のため、この割合はさらに低くなるとみられる。

 こうした事情にもかかわらず、活動の呼びかけ人たちは、この地で入手可能なテクノロジーだけでも、今までにない効率で参加者を動員できると自信を持っている。

 『 http://www.rantcollective.org/ RANTコレクティブ』の『スターホーク』と名乗る呼びかけ人は「カンクンまで行って抗議活動を行なうためには、距離と費用という壁があるが、それでも1万人から2万人もの参加者がいると見込んでいる」と期待を寄せる。

 「インターネットのおかげで、これでとは違ったタイプの地球規模の会話ができるようになった。カンクンに向けた組織活動は、インターネットなしではこれほど効果的に進められなかっただろう」

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