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2003年09月03日(水) 00時00分

コメ不作 慌てない、慌てない 東京新聞

 東北の冷害は、十年ぶりのコメ不作を呼び寄せた。だが、慌てるのはまだ早い。変革期を迎えるこの国の主食と人との関係をもう一度見つめ直せという、天からのメッセージとも受け止めたい。

 農水省が発表した八月十五日現在のコメの作柄概況で、北海道と、青森、岩手、宮城の東北三県が「著しい不良」とされた。三重県では、一九六五年の調査開始以来初めて「不良」となった。

 早場米が実を結ぶのに大切な六月以降の低温と日照不足、そして八月に入ってもやまないヤマセ−。どれもこれも、「平成米騒動」と呼ばれた一九九三年不作の悪夢をよみがえらせる。

 こうなると、国全体を何となく不安にさせてしまうのが、主食の主食たるゆえんだろう。でも、慌てて買いだめに走ることはない。農水省も大手米穀商なども声をそろえて「米騒動の再現はない」と予想する。

 この時期の天候不順は、全国に約一兆円の稲作被害をもたらし、六十キロ六万円の「魚沼コシヒカリ神話」を生んだ十年前とそっくりだ。だが、コメの流通や消費を取り巻く状況が当時とは随分違う。

 第一に、備蓄米が大きく増えた。政府備蓄米と民間の自主流通米を合わせた国内在庫の総量は、九三年の約八倍に上っている。輸入も部分開放された。

 一方で、消費者にもコメ離れが進んでいる。国民一人当たりの消費は当時より一割近く減っている。

 コメの流通が政府の統制下にまだ置かれていた十年前は、国産米の品薄に乗じた法外な値段のやみ米が横行したが、それも九五年に事実上自由化された。

 流通側も「米騒動」の混乱を教訓に、「作柄の良いブレンド米の販売に力を入れるなど、銘柄にはこだわらない」と、比較的冷静に対処を進めている。

 新潟産コシヒカリなど一部銘柄米が卸売り段階で急騰の兆しを見せているのは、消費者自身の「ブランド志向」の反映にほかならない。

 大切なのは、とにかく慌てないことだ。新多角的貿易交渉の進展により、食環境はさらに大きく変化する。十年ぶりの凶作をきっかけに、消費者には、天候に左右されやすい食糧生産の危うさとコメ不足がもたらす影響を直視して、「主食」の意味を問い直すよう促したい。

 生産者には、農業災害補償制度で急場をしのぎ、「高値で売れるコメ作り」の市場調査に、生き残りと自立をかけて乗り出す気概を、逆境の中で見せてほしい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030903/col_____sha_____004.shtml