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2003年09月02日(火) 03時23分

<ポストポリオ患者>厚生年金支給されず 再審査を請求毎日新聞

 40代後半でポリオ(せき髄性小児まひ)の症状が悪化し、両足が機能障害になった男性が、障害厚生年金を申請したところ、「ポリオ発症時(生後半年)には、厚生年金に入っていなかった」という理由で不支給になっていることが分かった。中高年になって症状が重くなるケースは、ポストポリオ症候群(PPS)と呼ばれ、最近10年間で1万2000人がPPSで障害者になったと推定される。男性は「同様に門前払いされている人は多いはず」として、社会保険審査会に再審査請求をした。認められなければ提訴する方針。

 東京都江東区の元会社員、島田一郎さん(52)。島田さんは生後半年でポリオにかかり、右足に軽度のまひが残ったが、日常生活に支障はなかった。99年1月、突然、障害がなかった左足が動かなくなるなど症状が悪化。通勤が困難になり、昨年4月、28年間勤務した会社を退職した。

 同年7月、社会保険事務所に障害厚生年金を請求したが、「ゼロ歳児の障害の継続で、発症時は被保険者ではなかった」として不支給になった。島田さんは「厚生年金に加入後、重度の障害になっており、不支給は不当だ」と社会保険審査官に審査請求したが認められず、今年4月再審査請求した。

 島田さんの代理人の社会保険労務士、鈴木静男さんは「実務上は、疾病がおおむね5年以上治療の必要がなく、社会復帰していれば、『社会的治癒』と判断し、その後の再発を別の障害と認めている。今回のケースは再発まで40年間も治療しておらず、支給を認めないのは行政の一貫性に欠ける」と主張している。

 厚労省によると、ポリオに由来する身体障害者(推計)は、91年に4万3000人だったが、01年には5万5000人に増えている。新たなポリオ患者の発生がほぼ皆無なため、増加はPPSが原因とみられる。【玉木達也】

◇ことば=ポストポリオ症候群(PPS)

 乳幼児のころポリオ(せき髄性小児まひ)にかかった患者が、いったん症状が安定した後、中高年になってから、新たに筋力の低下や萎縮(いしゅく)、関節の痛みなどを起こす2次障害の総称。1950年代にポリオが流行した欧米で、70〜80年代になってから、これまで運動障害がなかった手足に、新たな障害が生じるポリオ患者が急増し、知られるようになった。日本でも80年代後半から研究が始まった。

 98〜00年度の旧厚生省の研究事業として複数の専門家が調査。その中で、ポリオ患者1385人を対象にアンケートを実施(男女ほぼ半数、662人が回答)した報告書によると、2次障害について、約75%があると答え、そのうち3分の1が40歳代に始まり、発症後30〜50年で6割が悪化したと回答している。

 症状は筋肉疲労や関節痛、筋萎縮などで、ポリオに関連して現在、医療機関を受診している人は18%しかなかった。回答者の平均年齢は48歳で、ポリオ発症の平均年齢は2歳だった。

 一方、原因についてはポリオにより減数している運動神経細胞が年齢を重ねるに伴い、さらに減少した結果などが考えられるが、真相は解明されていない。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030902-00000147-mai-soci