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2003年09月02日(火) 03時23分

<預金>唐津の農協、未確認で1億円超引き出す毎日新聞

 預金口座から意に反して1億円以上を引き出され、寺に寄付されたとして、佐賀県唐津市の一人暮らしの女性(81)が、唐津市農協と寺に預金の返還を求め、佐賀地裁唐津支部に提訴した。女性は当時、病気で入退院を繰り返し、精神的に不安定だったという。寄付依頼の有無について主張は平行線だが、農協職員は規則に反して預金の出し入れをしており、佐賀県は異例の改善指導をした。

 女性は長年、大阪市内でお好み焼き店を経営していたが、90年に帰郷し、同農協に普通定期預金口座を開設した。不動産売却などで93年末の残高は1億1600万円あったが、94年1月にほぼ全額が払い戻され、地元の寺名義の口座に入金された。さらに同年6月、別の口座の2000万円も寺側に振り込まれた。

 同県によると、農協は「預金事務取扱要領」で口座からの預金の出し入れは原則的に本人がするよう定められているが、同農協は担当者が通帳と印鑑を預かり、手続きを代行していた。また、依頼内容を記した書面はなく、弁護士や行政書士などの第三者も立ち会っていなかった。寺は本堂などを改修し、既に完成している。

 女性は「95年に口座内容を確認して初めて気付いた」と主張。担当者に抗議し、口座に残っていた2000万円は返還された。しかし、他は拒まれたため、農協と寺に1億1600万円の返還を求めて提訴した。

 これに対し農協は「寄付の依頼はあった。第三者を入れたり、書面を交わすべきだったとは思うが、当時はそれほど厳密ではなく、手続きに問題はない」。寺側は「寄付の申し出があったと聞き、ありがたく受け取っただけで困惑している」と話している。【大久保資宏】

◆安易な通帳保管に警鐘

 今回のトラブルは、高齢化時代を象徴する問題ともいえる。農協は、口座の出し入れは原則本人と規定しているものの、一人暮らしのお年寄りの通帳や印鑑を担当者が保管し、口頭で指示を受けて入出金するケースは実際にある。このため、問題が起きた際に「水掛け論」になる恐れは十分にあり、農協側には文書を残すなど、慎重な対応が必要だろう。

 女性は寄付をした寺の檀家(だんか)ではなかった。その寺に1億円を超える寄付をするかどうか。さらに女性は心臓に持病があり、入退院を繰り返していたうえ、物忘れが激しく、既に痴呆の兆候が見られたという。

 こうした事実を背景に、裁判では(1)女性に当時、適正な判断能力があったか(2)農協側が、女性の真意を十分確認するなどの注意義務に違反したか——などが争点になると予想される。

 金融問題に詳しい甲斐道太郎・大阪市立大名誉教授は「一人暮らしで病気がちの心細さから『寄付』を口にしてもおかしくない。金額が莫大で、第三者を立ち合わせたり、書面を交わすなどすべきで、農協側の注意義務違反は免れないだろう」と話している。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030902-00000157-mai-soci