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2003年08月29日(金) 13時50分

病院長と看護師長を書類送検、セラチア菌による院内感染朝日新聞

 東京都世田谷区の伊藤脳神経外科病院で02年1月、セラチア菌による院内感染で入院患者24人が発症し、このうち7人が死亡したとされる事故で、警視庁は29日、伊藤誠康院長(46)と女性看護師長(71)を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。患者から検出した菌の遺伝子のパターンが一致した12人(うち死者6人)について立件した。

 捜査1課は、院内が不衛生だったため、看護師の手を介して薬剤がセラチア菌に汚染されたことが感染の原因と判断、衛生管理全体がずさんだったとして管理責任者の2人の刑事責任を問うた。

 警察庁によると、セラチア菌による院内感染で医師が立件されるのは初めてという。

 同課の調べでは、伊藤院長らは血液が固まるのを防ぐ「ヘパリン生理食塩水」(ヘパリン生食)を院内で作り置きし、これを数日間にわたって常温で保存するなどしていた。このヘパリン生食を投与された入院患者12人を02年1月8日から同16日の間に、弱毒性腸内細菌の一種のセラチア菌に感染させ、当時60〜91歳の患者6人を敗血症性ショックなどで死亡させた疑い。ほかに当時68歳の男性ら6人を発症させたとされる。

 伊藤院長は調べに対し、「安全管理者として多数の死傷者を出してしまったことを深く反省している」と認めている。看護師長も「院内感染は自分の責任だ」と述べているという。

 同病院は、無菌装置内ですべきへパリン生食の調合作業を、衛生状態の悪い病院2階のナースステーション点滴作業台で看護師がしていた。ナースステーションでは看護師の手洗いと医療器具の洗浄を同じ場所でしていたほか、殺菌効果の高い消毒液での手洗いをしていなかったとされる。

 洗い場の脇にある、医療器具乾燥用かごの下に敷いてあったタオルからは、発症患者から検出されたものと同じ遺伝子パターンのセラチア菌が検出された。

 同課は、看護師の手を介してセラチア菌に汚染されたヘパリン生食が、点滴のために血管に針を刺したままにする「留置針」を通じて、患者の血液中に流入したことが院内感染の原因と判断。手の消毒を十分にし、院内を清潔に保てば感染を防げたとしている。

 世田谷区は昨年5月にまとめた報告書で、菌の遺伝子パターンが一致したことから、患者12人(うち死者6人)に感染したとし、別の12人(同1人)は感染の疑いがあると結論づけた。

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伊藤脳神経外科病院は29日、伊藤誠康院長名で「亡くなられた方々、ご遺族、感染された患者様に心より深くおわび申し上げます。患者様への対応は弁護士を通じて行っておりコメントは差し控えさせていただきます」との談話を出した。

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 セラチア菌をめぐっては、各地で院内感染が相次ぎ、旧厚生省は00年12月、血管内に長期間差し入れておく「留置針」などの不十分な消毒、消毒用のアルコール綿の作り置きなどに注意するよう呼びかけていた。今回の事故は過去の教訓が生かされておらず、厚労省が作成を指導していた院内感染対策のマニュアルを作っていなかった。

 同省は02年7月に院内感染対策有識者会議を発足。来月にも行政とは独立した機関で、感染症の専門家が診療所などの相談に応じて対策を支援する「院内感染地域ネットワーク」(仮称)を各地に設置することなどを提言する予定だ。(08/29 13:49)

http://www.asahi.com/national/update/0829/014.html