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2003年08月13日(水) 00時00分

防犯カメラの功罪 東京新聞

 先月、長崎で起きた男児誘拐殺人事件の少年の補導は、防犯カメラが決め手になった。

 防犯カメラが犯罪捜査に役立つことは今回も実証されたが、だからといって、この種のカメラを増やす動きを、手放しで喜ぶわけにはいかない。

 デパートやスーパー、銀行、書店、商店街、エレベーターの中や高速道路を走る車さえ、カメラが監視している。いつの間にか、誰もが犯人のように「監視される」社会になってしまった。

 監視カメラを最近つけたある事務所ビルでは、理事会でプライバシー保護と防犯をめぐって議論があった。一番の問題はビデオテープを、誰がどう管理するかだったという。

 人権やプライバシー保護が重視されるにつれ、防犯や監視カメラが増えるのは皮肉だ。

 事件を未然に防ぐ意味でも監視カメラは有効だが、四六時中カメラで監視される社会は異常でしかない。

 最近一人暮らしのお年寄りが、安全のために監視カメラを家に取りつけようとしたが、やめた話を聞いた。

 「監視カメラがあれば安心ですが、私も監視されます。気が休まらないことに気づいたのです」という。

 防犯を口実に、監視カメラを増やすことには慎重であってほしい。設置する前に必要最小限にする議論をすべきではないか。

 東京・杉並区は、先ごろ「監視カメラに関する専門家会議」を設け、ルールづくりの検討をはじめた。

 都会生活は、今後ますますプライバシー保護と監視という、矛盾のせめぎあいの中で営まれることになる。

 長崎の事件は、私たちの暮らしに大きな課題を提起したように思う。 (国保良江)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/ronsetu/20030813/col_____ronsetu_000.shtml