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2003年08月10日(日) 06時24分

隔壁修理ミス、日航が撮影 ジャンボ機事故の7年前朝日新聞

 85年8月、群馬県上野村の御巣鷹(おすたか)の尾根に日本航空のジャンボ機が墜落した事故で、運輸省航空事故調査委員会(当時)によって事故原因とされた78年の米国ボーイング社による同機の圧力隔壁の修理について、日航が200枚以上の写真撮影をし、その中にミスが分かるような写真があったことが分かった。当時、日航は「ボ社の技術は絶対」などとして検証をしておらず、結果的に7年後、事故は起きた。墜落から18年後の夏、新たな事実がまた一つ、明らかになった。

 事故機は78年6月2日、大阪空港で機体尾部を滑走路にこする「しりもち事故」を起こし、客室の気圧を保つ後部圧力隔壁が損傷した。ボ社の修理チーム44人が東京・羽田空港で同月17日から7月11日まで修理した。

 関係者によると、問題の圧力隔壁の交換作業は6月24日から7月1日までで、その際、日航は将来の社員教育の資料にしようと、同社整備員が作業をつぶさに撮影。写真は200枚以上で、日航はそれらをアルバム10冊に収めたという。

 作業は下半分の隔壁を新品に交換するもので、気密性を保持したまま、上下の隔壁をしっかりつなぎ合わせるため、間に中継ぎ板をはさむはずだった。

 ところが、寸法足らずの中継ぎ板を使うミスを犯し、その結果、3カ所に分散するはずの負荷が真ん中の接合部に集中し、金属疲労を起こしやすい接合形態となった。

 実際、気圧が低い上空では圧力隔壁に大きな圧力がかかる。高度1万メートルでは隔壁1平方メートル当たりにダンプカー1台分に相当する約6トンの荷重が加わるという。こうした負荷を受けた事故機は、修理から約1万6200時間の飛行と発着を繰り返したため、接合部分に亀裂が入って隔壁を一気に破壊。そこから勢いよく流れ出した空気によって尾翼の一部が吹き飛び、コントロール不能に陥って墜落したとされる。

 墜落事故後、写真は日航から群馬県警に任意提出された。うち1枚に「修理ミス」とみられる状況が写っていた。客室側から隔壁の修理部分を撮影した写真で、本来なら上に向かって延びているはずの中継ぎ板が写っておらず、下の隔壁のところで切れていた。

 この写真について、当時の捜査関係者は「上下の圧力隔壁が不自然に接合されているのが分かり、重要な証拠として捜査に役立った。しかし、日航側には修理の途中でミスを確認する義務はなく、偶然撮影した写真を根拠にミスを見つけられなかった過失を問うことはできなかった」と振り返る。

 日航広報部は「当時、航空機メーカーの修理といえば絶対的な信頼があった。まれな機会なので修理作業を記録するために撮影しただけで、修理ミスを見つけ出す目的はなかった」としている。

 事故を巡っては、群馬県警が日航、ボ社の担当者や運輸省の航空機検査官ら計20人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検し、前橋地検は写真も参考にした上で、刑事責任の有無を検討。結局、当時ボ社の修理は世界的に最高水準で、技術的に劣る日航や運輸省はボ社の修理ミスを疑って作業工程について指示したり、修理後に精密に検査したりする権利や義務はなかったとして、過失責任は問えないと判断した。ボ社についても聴取ができなかったことなどから過失を特定できなかった。(08/10 06:23)

http://www.asahi.com/national/update/0810/004.html