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2003年08月07日(木) 17時21分

EUがマイクロソフトに最後通告——対応次第では数十億ドルの罰金もWIRED

 ベルギー、ブリュッセル発——6日(現地時間)、欧州連合(EU)は米マイクロソフト社に対して、米国での歴史的な反トラスト訴訟での和解後、今度は別の市場で独占を図っているとして、自発的な譲歩を迫るべく通告を行なった。

 EUの反トラスト監視機関である欧州委員会は、マイクロソフト社の製品を使用している150社以上の企業に対する最近の調査で、「マイクロソフト社の優位な立場の濫用はいまだに進んでいる」ことが判明したと述べた。

 同委員会は監視下にある2つの市場に関して、マイクロソフト社に自らの立場を主張するか、市場開放に同意するかを選ぶ「最後の機会」を与えた。2つの市場とは、複数のデスクトップ・コンピューターを結ぶローエンドサーバーと、インターネットによるデジタルビデオやオーディオの配布が普及していくなか、欠かせないソフトウェアとなっているメディア・プレーヤーだ。

 「罰金を科す可能性もある」とEU側では述べている。EUは違反者に対して全世界の売上の最高10%を罰金として科すことができる。マイクロソフト社の場合、その額は数十億ドルとなる可能性がある。

 EU側は4年近くかかったEUの調査結果について、「十分な資料がそろい、強力な論拠ができた。法的かつ事実に基づく分析は完了したとみなし、それに基づいて最終的な意思決定を行えるようになった」と説明している。

 EUは9月末を期限とし、それまではマイクロソフト社の回答を待つという。

 パリにあるマイクロソフト社ヨーロッパ本社の広報担当、ティファニー・ステックラー氏は、EUのこの措置を「遺憾だ」としながらも、譲歩するかどうかについてはコメントを避けた。

 「もちろん異議申し立てへの対応は行なう……また、前向きな解決策を見つけるべく努力は続ける」とステックラー氏は述べた。

 マイクロソフト社に対してはこれで3回目となる、EUの「異議申し立て」は司法からの反発を避けるために、この問題に関するてこ入れをねらったものだ。昨年、EUの反トラスト監視機関はそれぞれ別件の3件の訴訟で敗訴するという失態をさらし、訴訟に関して「ずさん」だと司法から批判を受けた。

 また、EUはこの件に関して慎重を期していた。これには、2001年に、米国政府がすでに承認していた米ゼネラル・エレクトリック社と米ハネウエル社の合併をEUが拒否するという前例のない事態によって欧米間に生じた騒動を繰り返すことは避けたい、との事情がある。この件については今なお係争中だ。

 「EUは自らの論拠を、可能な限り強固なものにしたいと考えている」と、ロンドンのテイラー・ウェッシング弁護士事務所で反トラスト法を専門とするマーチン・ベイカー弁護士は述べている。

 マイクロソフト社は、昨年の米国での和解内容と、その後同社が自発的にとっている措置が、今回のヨーロッパからの異議に応えていると主張している。さらに、マイクロソフト社はソフトウェアのコードの一部を競合他社に公開し、コンピューターメーカーがウィンドウズ・アプリケーションのアイコンの一部を非表示にすることにも同意した。この措置によって競合ソフトウェアが目につきやすくなるはずだ。

 しかしマイクロソフト社の競合他社は、まだ不十分だとして、EUに対してさらに要求を強めるよう働きかけている。また、EU側にもその用意はあるようだ。

 EUはマイクロソフト社がパソコンにおけるウィンドウズの「圧倒的に優位な立場」を利用して、拡大著しいローエンドサーバー市場に強引に参入しようとしていると非難している。

 米サン・マイクロシステムズ社や米IBM社などの企業は、マイクロソフト社がウィンドウズを開発するにあたり、競合他社のソフトウェアよりも自社のサーバーソフトウェアとの組み合わせの方がうまく動作するようにして、自社を不当に優位にしていると不満を漏らす。

 EU側は、前述の企業を対象とした調査において、特にサーバー間で動作するソフトウェアでの「完全な相互運用性」に関する不満が回答者の「圧倒的多数」から上がっており、しかも、この問題は米国での和解では取り上げられていないとしている。

 「まだまだ行動を起こす余地はある」とEU側は述べている。

 EUはまた、マイクロソフト社は自社製のメディア・プレーヤーをウィンドウズに組み込むことで、米アップルコンピュータや米リアルネットワークスといった競合他社を排除していると主張している。両社はいずれも、デジタル・ビデオクリップや音楽ファイル、またインターネットラジオなどのさらに新しいコンテンツを再生できるソフトウェアを開発している。

 メディア・プレーヤーに関する論争は、マイクロソフト社と米ネットスケープ・コミュニケーションズ社の間で起こったブラウザー戦争の経過をそのまま繰り返している。ブラウザー技術で先頭を走っていたのはネットスケープ社だったが、マイクロソフト社がOSでの優位性を利用して『インターネット・エクスプローラ』の普及を図ったため、壊滅的な打撃を受けた。EUによると、ソフトウェア開発会社だけでなく、音楽や映画関係の会社も調査した結果、マイクロソフト社のメディア・プレーヤーが「ありとあらゆるマシンに導入されている」ために競争状態が弱まり、「製品の技術革新が阻害され、最終的には消費者の選択肢が減っている」という。

 この調査に詳しい業界関係者が匿名を条件に語ったところによると、EUは、たとえばオンラインでコンテンツを公開する人たちが徐々にマイクロソフト社独自のデータフォーマットを受け入れつつあるのは、ウィンドウズOSの最近のバージョンのほとんどにメディア・プレーヤーがすでに組み入れられているためだと結論づけているという。

 EUはマイクロソフト社に対して、同社のメディア・プレーヤーが含まれていないウィンドウズか、競合他社のプレーヤーが含まれているウィンドウズも出荷するよう提案している。

 マイクロソフト社はまた、サーバー市場の競合他社が同社の製品同様にウィンドウズとシームレスに連携する製品を開発できるよう、今まで非公開としていたコードをさらに公開せざるを得なくなるかもしれない。

 マイクロソフト社は自社が著作権を持つとみなしている情報の公開には難色を示してきた。

 「システムの仕組みをすべて公開するよう求めているわけではない。完全な相互運用に必要なプロトコル情報を公開するよう求めているだけだ」と、EU側は述べている。

[日本語版:高橋達男/長谷 睦]日本語版関連記事

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