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2003年08月07日(木) 13時04分

ネットゲームの架空通貨、現金で売買 詐欺事件も朝日新聞

 インターネットのゲームの中だけでしか使えない通貨などを、現金と交換する「取引」が広がっている。時には10万円以上が飛び交う。それだけ仮想空間に夢みるファンが広がる一方、それを食い物にした詐欺事件が、現実社会では起きている。

 「100万アデナで1万円。3000万アデナまで売ります」

 東京都板橋区に住む30代のアルバイト男性が、ネットの掲示板でこんな書き込みを見つけたのは4月8日だった。

 「アデナ」とは人気オンラインゲーム「リネージュ」の中で使われる通貨だ。プレーヤーはゲームの世界で自分の分身を操り、モンスターと戦う。そこで勝つとアデナが手に入る。アデナをためて、ゲームの中の武器屋で強力な武器や防具を買えば、より強い敵に立ち向かえる。

 板橋の男性が見た掲示板はリネージュ愛好家がつくるサイトにあった。男性は疑うどころか「相場より安い」価格に、「1500万アデナ」を買おうと決め、メールで教えられた売り主の口座に15万円を振り込んだ。

 だが——。「アデナ」を売ると見せかけて「円」をだまし取った。売り主(31)は、そんな詐欺容疑で板橋署に逮捕され、6月12日に起訴された。

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 リネージュは97年に韓国で生まれ、現在は世界で600万人が登録しているという。

 日本での運営会社エヌ・シー・ジャパン(東京都目黒区)によると、国内でも常時1万6000人が仮想現実の世界に浸っていると見られている。利用時間に応じて月500〜2000円の参加料を同社に払って遊ぶ。

 横浜市中区のネット喫茶「リバティハウス伊勢佐木町店」は、熱心なファンが集まることで知られる。

 会社員上野修三さん(36)もその一人。仕事を終えた午後7時前から、毎日4〜8時間、店のキーボードで分身の騎士を操って洞窟(どうくつ)や森に潜む敵と戦う。その際、ネットでつながる見知らぬプレーヤーと会話したり、協力して敵と戦ったりできる。

 「1人で戦うだけならすぐ飽きるが、各地の人と一体感を持てるのがたまらない」

 ネットを通じて分身同士が武器や通貨のデータを交換し合えるようになっている。規約で、現金での売買は禁じられ、悪質な場合はゲームの参加資格が停止されるようになっているが、取引は広がるばかりだ。

 「これからゲームを始めるという人にアデナを8万円で売った」(25歳の熊本県の会社員)、「アデナを売って30万円を手に入れた。ゲームに費やした金や時間を取り戻したかった」(21歳の千葉県の大学生)といった声を聞く。16回の取引で50万円を得たという北海道の会社員(31)もいる。

 大手のネットオークションには、アデナや武器の売買を持ちかける書き込みが数十件単位で並び、数万〜十数万円の取引が頻繁に成立している。

 その一方、事件も広がっている。2月には川崎市と神戸市で、パスワードを盗み見て他人の分身を操り、武器を売るなどしたとして、14歳と17歳の少年が不正アクセス禁止法違反容疑で書類送検される事件も起きた。

 運営会社によると、本家の韓国では毎日十数件、詐欺の被害を訴える声が届くといい、広報担当は「悔しいが、ネットを通じて行われる取引や事件を完全に防ぐことはできない」と認める。

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 板橋署によると、被害者の男性は「カネの振り込み後に、ゲームの世界にある宿屋の前でアデナを渡す」という売り主の言葉を信じ込み、待ちぼうけをくらい、だまされたことに気づいた。

 一方で売り主は本名を隠すことなく、自分名義の銀行口座にカネを振り込ませ、逮捕されるに至った。

 「詐欺事件としては単純な手口だが、ネットの世界は理解できない」

 捜査幹部はつぶやいた。(08/07 13:02)

http://www.asahi.com/national/update/0807/021.html