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2003年08月05日(火) 13時19分

<静岡がんセンター>医療情報を全面開示 注目の運営毎日新聞

 医師と看護師は対等。患者が望めば医療情報は全面開示——。富士山のふもと、静岡県長泉町に昨年9月開院した県立静岡がんセンター(山口建総長)に、医療関係者の注目が集まっている。「患者の視点」を重視した運営は「病院の常識」をことごとく覆す。視察に訪れた医療関係者は既に2500人を超えた。

 ◆対等

 「先生、別の科の先生に診てもらいましょう」。ある看護師(48)は、鎮痛剤の使い方で担当医に提案したことがある。患者は夜間、薬の効果が切れて苦しんでいた。患者の精神的負担を軽くする専門医に診察を頼み、別の薬を加えることが決まった。「看護師が医師にアドバイスするのは、ここではよくあることです」と看護師が明かした。

 病院には二つの組織図がある。医師を中心にした診療の組織図と、看護師を医師より上に置く患者ケアの組織図だ。「患者と24時間接する看護師こそ患者ケアの中心だ」という考えから、組織図上も医師と看護師は対等に扱われている。

 「手術に心底納得していないとか、患者が医師に言いづらい情報を看護師は知っている」と皮膚科のベテラン医師は利点を認める。とはいえ看護師が遠慮してしまうこともなくはない。戸塚規子看護部長は「これまで看護師は医師に従うだけで済んだ。でも責任を持つ以上、看護以外のことも学ばなければならない」と自戒を込めて話した。

 ◆タッチパネル

 病室のベッド横にB5サイズのモニターがある。タッチパネルで「血液検査結果」に触れると、白血球、腫瘍(しゅよう)マーカーの値など、この部屋で暮らす男性患者(55)の検査データ約40項目が表示された。「日本一の電脳化」を自任するこの病院の情報開示だ。

 男性はノートパソコンを持ち込んで、メールで他病院の医師のセカンドオピニオンを聞き、担当医に相談している。「患者に情報を提供する仕組みが整い、医師と対等にコミュニケーションを取っていると思う。『お任せします』という意識ではいられなくなった」と男性は話した。

 ロビーの近くには、よろず相談所が設けられ、月500件近い相談が患者から寄せられる。

 ◆脱学閥

 人材供給を大学病院に頼らず、医師は公募で集めた。「学閥に頼ると、頼りない医師が来ても断れず、患者のためにならない」。国立がんセンター研究所副所長を経て就任した山口総長が解説する。開院前には「大学病院に頼らなければ医師を集められない」と心配する声もあった。だが平均倍率は約3倍。杞憂(きゆう)に終わった。

 今春見学した埼玉医科大付属病院の尾本良三院長は「患者の不安を解消する点で、多分、日本の最先端の病院だ。医療の進むべき道の一つを暗示している」と評価する。【古関俊樹】

 ◇県立静岡がんセンター がん治療の拠点として静岡県が総工費約580億円で建てた。原則紹介制で、診療科は36科。615床。うち緩和ケア(ホスピス)病棟は50室で国内最大級。最上階の11階に患者用の展望風呂を設けるなど「癒やし」の環境づくりにも力を入れている。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030805-00001052-mai-soci