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2003年08月04日(月) 11時48分

「値札」としてのプライバシーポリシーjapan.internet.com

前回 は「Web ビーコン」を例に、プライバシーをめぐる社会の変化が、HTML メールを使ったマーケティングに対してどのような変化を要請しているかを確認しました。

今回は、メールマーケティング成功のために、顧客と信頼に基づく関係を築いていくには、なにが必要なのかを展望してみたいと思います。信頼され続けなければメールを開封もしてもらえない時代に、どのようにしたら効果の高い HTML メールマーケティングを成立させられるのでしょう?

まずは初心に返って目的を明確に

送る側が「なんのためにどんなコンテンツを提供するのか」を明確にできていなければ、それが受け取る側にとって有益なものになる可能性はほぼないといっていいでしょう。まずは、改めてメールマーケティング自体の目的を確認しましょう。

その目的を達成するために、情報をメールで伝えることだけでなくなんらかの情報収集が必要になってくる場合、プライバシーポリシーへの記載が必須となってきます。

例えば下記のようなケースでは、それを明確にプライバシーポリシーに記述することが必要です。

・取得した情報を基に、個人を特定しない調査や開発を行いたい
サイトや商品、サービスを、分析したり改善したりするために、取得した情報を使う場合です。
・取得した情報を基に、個人を特定した分析/サービスを行いたい
各ターゲットごとにカスタマイズした情報を提供することで、売上やレスポンスの向上を図る場合などがこれに該当します。(注1)

また一方で、情報収集が目的として必須ではない、というケースも考えられます。単純な行動促進やブランドメッセージの伝達のみを目的とする場合です。

こうしたケースで情報を収集してしまうと、個人情報保護法に定められた「適切な管理」のためのコストや情報漏洩のリスクなどが、目的に対してペイしない可能性があります。その場合、「情報を一切収集しない」という選択肢も考える必要があるでしょう。

集めた情報はどのように顧客ベネフィットにつながるのか?

次に改めて確認すべきことは、上記のような情報収集をすることで、顧客に対してどのような付加価値を提供できているか、ということです。

例えば下記のような質問に答えてみることでそれは確認できます。

それらの情報を収集することで、
「顧客にとって費用を低減できる提案をできるか?」
「顧客にとって希少性がある機会を提案できるか?」
「顧客にとって新奇性のある情報を提供できるか?」

これらの質問に具体的に答えられない場合、その情報の取得の意味をもう一度考え直す必要があります。顧客の立場からすれば、収集される情報が自らのベネフィットにつながって初めて、「情報を提供/預託する」意味が出てくるからです。

プライバシーポリシーの意味

まとめましょう。

1.「なんのために」「どのような情報を取得するのか」をわかりやすい形で顧客に示すこと
2.そしてそこから得られた情報を使って独自性のあるベネフィットを顧客に提供していくこと

この2つの関係を意識した取り組みを行うことが、顧客との信頼関係に基づいたメールマーケティングの第一歩です。

実は、ここにひとつの仮説があります。上記の考え方を基盤とすると、メールマーケティングにおける「顧客のプライバシー権」と「顧客に提供するベネフィット」の関係とは互いに「対価」の関係になった、ともいえるのではないでしょうか? エンドユーザーからすれば、「個人情報」を提供/預託することの対価として「有益な情報」を得る。マーケティング実施企業にとっては、「顧客ベネフィット」を構築することの対価として、「マーケティングデータ」を得る、という関係にあるからです。

だとすれば、プライバシーポリシーとは「契約書」であり「値札」のようなものですから、曖昧な記述は許されません。例えば、上に述べた P3P などのプライバシー関連技術に対応する、プライバシーポリシーの内容をわかりやすくアイコンで示す(注2)、などの努力が求められるところでしょう。

さて、仮説の是非はともかく、本稿で提起した考え方を自社で取り組み中のメールマーケティングに生かす場合、どのように具体化できますか? 御社のサービス向上に役に立つでしょうか? ぜひ感想を聞かせてください。

注1:こうした目的の記述については、W3Cで定められたプライバシー技術( P3P:PlatformforPrivacyPreferences )の仕様に、一般的な類型がありますので、参考にできるでしょう。
注2:たとえば同じように、情報技術の発展が新たな問題につながっている著作権の分野では、「クリエイティブコモンズ」などの好例があります。

(執筆:阿部樹、監修:塚田耕司)

記事提供: HTMLメールマーケティングガイド


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