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2003年08月02日(土) 00時00分

コメ政策改革 後戻りはさせられない 東京新聞

 全国一律の減反政策を改めて、農家の自立を促進するのが、コメ政策改革の“大義”ではなかったか。本年度を上回るコメの関連予算は、使いようでは改革の出ばなをくじく危険もはらんでいる。

 来年度概算要求で、農水省は、コメ関連予算を本年度並みの二千四百億円程度に抑えたかった。一方、全国農協中央会(全中)は、減反制度の円滑な移行には、生産者にメリットを与えることが必要だと強調し、三千億円規模を求めて争った。

 その結果、全中は「満額回答」を引き出した。新制度に不安を抱く農家の気持ちはよく分かる。だが、将来のことを思えば、これを素直には喜べない。

 自民党内部にも、“ばらまき”への逆行を思わせる関連予算総額の積み増しが、改革の意欲をそぐのではという懸念はあった。が、折からの衆院解散風が、全中には強い追い風として吹いた。

 昨年末策定の米政策改革大綱は、国主導の減反制度を二〇〇八年度までに全廃し、農水省の需給見通しに基づく、農協、農家の自主調整にゆだねるという大転換を打ち出した。

 来年四月の改正食糧法施行に向けて、全国一律の転作奨励金を廃止する。そして、助成対象を地域がその特色に合わせて決める「産地づくり推進交付金」と、大規模農家を対象に米価下落時の収入補てんを上乗せする「担い手経営安定対策」を新設し、稲作農家を自立へと誘導するのが柱である。

 コメ改革は、第一に農家のために断行されるべきものだ。政策米価のぬるま湯の中で退化した体力と競争力を取り戻し、生き残りをかけた勝負に臨む準備である。安価でも全量買い上げの保証がある計画外流通米が、今改正でなくなることも、そのシグナルといえるだろう。

 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉で、米欧が協調して妥協案に向かい始めた。いつまでも政府・与党の“追い風”頼みでは、消費者のコメ離れ、市場開放圧力という「あらし」の中で、難破するのを待つだけだ。

 だからこそ、積み増しされた予算をただの所得補てんに終わらせず、可能な限り戦略的に活用するよう、農協、農家が地域の実情を考慮して知恵を出し合う努力が欠かせない。

 コメ改革とは、量から質への転換にほかならない。消費者に安価でおいしい農産物を提供できる地域ビジョンを描くためなら、過渡期の投資は惜しくない。明日のために種をまくこと。これこそ、農業の原点であり、真価でもあるはずだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030802/col_____sha_____003.shtml