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2003年07月20日(日) 00時00分

非行少年処遇 感情的議論は不毛だ 東京新聞

 罪を犯した子どもたちをどのように処遇すべきかは、冷静かつ論理的に考えなければならない。単純な重罰化では少年犯罪に対処できない。まして「親も連座」というのは常軌を逸している。

 法務省が十四歳未満でも少年院へ収容できるようにすることを検討し始めた。非行少年の立ち直り支援をより確かにできるなら、あながち否定すべきではない。

 刑法では刑事責任を科すのは十四歳以上、少年院法では少年院収容も十四歳以上と定められている。長崎市で幼児を殺害した中学生(12)のような十三歳以下の少年は、厚生労働省所管の児童自立支援施設に収容されることが多い。

 だが、この施設の非行少年に対応する力には疑問を抱く人が少なくない。非行少年を扱った経験のある職員がいなかったり、いても経験が乏しい施設もあるからである。

 職員が夫婦で住み込み、家族的雰囲気で子どもたちを指導する独特の仕組みをやめるところも出ている。職員の労働過重などが理由だ。二〇〇二年十月、職員が収容中の少年らに襲われて殺された愛知県春日井市の愛知学園も見直し組だった。

 少年院には非行少年を扱う専門職員がいて、指導のノウハウも蓄積されている。精神的に問題を抱えた子どもは医療少年院での処遇も可能なだけに、立ち直り援助の選択肢を広げる趣旨なら考慮に値する。

 他方、少年院は自立支援施設に比べて拘禁度が高い、収容者の年齢幅が広くなると全体の処遇が難しくなる、など懸念材料もある。自立支援施設の対応力を高める方策も選択肢に加えて慎重に検討したい。

 まして、収容年齢引き下げが、長崎の事件で再び出てきた重罰化論や鴻池祥肇防災担当相の時代錯誤的な発言を意識したものなら論外だ。

 十四歳という刑事責任能力の区切りは国際的にも高くはない。スペイン十六歳、デンマーク十五歳などもっと高い国もある。封建時代の一族連座制ではあるまいし、親を「市中引き回しのうえ打ち首」とは理性ある人物の発言とは思えない。「(現状は)加害者の人権を優先、被害者の人権を後回しにしている」というのも何をさすのか説明がない。

 少年犯罪対策をまとめる責任者でありながら、感情的に憎悪をあおるような発言を繰り返している。これは被害者・遺族の意にかなうものではないだろう。

 関係者は、具体的データを下敷きにした、冷静かつ論理的な議論こそが実りをもたらすことをくれぐれも肝に銘じてほしい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030720/col_____sha_____003.shtml