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2003年07月08日(火) 17時20分

市民が政府を監視しかえすウェブサイトが登場WIRED

 「政府の務め、それは正直であることにほかならない」と言ったのは、米国の独立宣言の起草者で、第3代大統領を務めたトーマス・ジェファーソンだ。

 そんなジェファーソンなら、新しくできたウェブベースのデータ貯蔵庫にきっと賛同したのではないだろうか。なぜならこのサイトは、政府を監視する市民の能力と、市民を監視する政府の能力との差が開いていくばかりなのを懸念した人々が、その差を縮めようと開発したものだからだ。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの研究チームは4日(米国時間)、『 http://opengov.media.mit.edu/ 政府情報認知』(Government Information Awareness:GIA)というウェブサイト開設を発表した。このサイトはメディアラボが開発したアプリケーションを使い、政府主導のプログラムや計画、あるいは政治家について、一般市民や多数のオンラインソースから情報を集め整理するもので、現在データベースには3000人を超す公人についての情報が収められている。

 GIAのコンセプトは、もし http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030627203.html 政府が一般市民について詳しい個人情報を得る(日本語版記事)権利があるのなら、市民も政府について同じように情報を得る権利があるというものだ。

 GIAは、米連邦政府の『 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030523202.html テロ情報認知(日本語版記事)』(TIA)プログラムに触発されて作られた。物議をかもしているTIAの目的について政府は、多様なデータベースからテロ活動の兆候を示すと思われる情報を集めて比較し、テロを起こす危険性のある人物を特定することであり、それ以外にはないと述べている。

 だが、プライバシー擁護派の多くは、TIAはクレジットカードでの買物から旅行計画まで、米国市民の生活を細かく監視する行き過ぎた計画だとして、これを批判している。

 「われわれの目的は、市民が自分たちの情報機関を持つための技術を開発することだ。市民が政府について集めた情報を持ち寄り、整理し、それを基に行動を起こすための技術だ」と語るのは、MITの大学院生でGIAの開発を手がけたライアン・マッキンリー氏。開発を指揮したのは、MITメディアラボに属する『 http://nif.www.media.mit.edu/research/ResearchPubWeb.pl?ID=55 コンピューティング・カルチャー・グループ』のクリストファー・チクセントミハイ助教授だ。

 「こうした技術を利用しない限り、人民による人民のための政府は望めない」とマッキンリー氏は言う。

 GIAを使えば、市民は特定の政府関係者や政治問題についてのデータを検索し、経過を追跡し、パターンを割り出し、履歴を作成することができる。たとえば政治家の選挙運動資金や企業とのつながり、さらには信仰する宗教や子弟が通う学校などのデータも簡単に入手可能になる。関心のある人物や事柄に関連したニュースが出れば、リアルタイムで通知してもらうこともできる。

 「これまでの歴史を見ると、情報がエリートの手に集中すれば民主主義が損なわれることは明白だ」とチクセントミハイ助教授は話す。「合衆国憲法の起草者たちは、もし市民が自らの統治者になりたければ、情報で武装しなければならないというメッセージを残した。われわれのプロジェクトは、この自治という米国的精神を今日のネットワーク化された情報技術の時代に持ち込むものだ」

 GIAサイトでは、市民が公人や政府のプログラムについて匿名で情報を寄せることができる。情報が寄せられると、それが事実かどうか確かめるため、システムが自動的に情報の当事者である政府関係者にコンタクトをとり、彼らに情報の信憑性を認める、あるいは否定する機会を与える。

 しかし米連邦捜査局(FBI)のファイルと同様、もし当事者本人が信憑性を否定しても、情報が消去されることはない。ただ、本人が否定した旨が記されるだけだ。何もやましいところがないのなら、政府関係者にGIAを恐れる理由はないはずだと、マッキンリー氏は皮肉たっぷりに語った。

 マッキンリー氏は「プログラマー、あらゆる種類の政治活動家、法律家、その他GIAの支援に関心があるすべての人々」に強く参加を呼びかけている。

 「コンピューターだけでは政府を監視できない。すでにどこかのデータベースに存在する情報は集められるが、貴重な情報の多くはまだデータベースに入っておらず、ただそれぞれの市民が知るだけにとどまっている。GIAは、こうした情報を統合して共有する手段を提供するものだ」とマッキンリー氏は述べた。

 「これは素晴らしいアイディアだ。すべてを白日の下にさらす」と語るのは、先ごろ『 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030307205.html 乗客事前識別コンピューター・システム2』(CAPPS 2)への抗議行動を起こした(日本語版記事)ビル・スキャネル氏。CAPPS 2は、航空券を予約する際、全員に身元調査を義務付けるもので、信用記録や銀行取引の記録、犯罪歴などが調べられる。

 「政府に市民を知る権利があるなら、政府の人間を税金で養っているわれわれは、それ以上に彼らのことを知る権利があるはずだ」とスキャネル氏。

 GIAは一見普通のウェブサイトのようだが、実際は精力的に政府に関するデータを集め、情報提供を受け、情報を告知するための技術を結集して作られている。

 「多様かつ無名な情報源から収集した機密情報を、いかにして使いやすく、不公平がなく、かなりの規模まで拡張可能なデータベースに仕立てるかが問題だった」とマッキンリー氏は言う。

 また、GIAは「オープンソース」だ。GIAが利用している他のデータベースの情報は http://opengov.media.mit.edu/source サイトで提供されており、誰もが好きに使えるようになっている。

 「民主主義を維持しようとするなら、説明責任を徹底することが不可欠だ」とチクセントミハイ助教授は述べた。「少なくとも、政府が市民を監視する技術に注いでいるのと同じだけの労力が、市民が政府を監視する技術にも注がれなければならない」

[日本語版:鎌田真由子/高橋朋子]

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