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2003年07月05日(土) 08時41分

同じ名義の車、全国に457台の怪 事件現場で次々と朝日新聞

 名義人が同じ別々の車が、関東各地で起きた事件や事故の現場で次々と見つかっている。警視庁が調べたところ、その数は457台。車の取引をたどると、茨城県のある村に行き着いた。

 人口約9500人、水田が広がる茨城県千代川村に住む女性(90)を6月中旬、茨城県警竜ケ崎署員が訪ねてきた。

 女性が所有する貸家に住んでいるはずの男の乗用車が4月、同県牛久市で衝突事故を起こした。運転していた男は車を捨てて逃げた。事情を聴く署員に女性は「よくわからない」と答えた。栃木や千葉、神奈川の各県警からも昨年来、問い合わせが相次ぐ。「こんなことになるとは」と女性は戸惑うばかりだ。

 名義人の男は、警視庁に昨年9月逮捕された住所不定、無職川島実被告(57)=電磁的公正証書原本不実記録罪などで有罪確定=だった。

 01年6月、川島被告は木造平屋建て、築30年以上の貸家を月3万円で借り、千代川村に住民登録した。「土木作業が忙しいので寝る場所を借りたい」と敷布団と毛布を持ち込んだ。しかし大家の女性が顔を合わせたのは、契約時と02年2月の退去時だけだ。

 村役場には頻繁に顔を出した。02年2月までに計29回訪れ、印鑑証明を142枚申請した。担当職員は「多いので変だと役場でうわさになったが、書式が整っていれば発行する決まりなので」と振り返る。

   ■   ■

 千代川村の村民になれば、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」で、車を運輸支局に登録する際、通常必要な警察発行の車庫証明がいらない。全国にこうした村は約520あり、登録書類に役場発行の印鑑証明を添えて運輸支局に出せばよい。対象の村は、駐車スペースが豊富にあるところが多い。

 川島被告はこの制度を悪用した。1枚の印鑑証明を何枚もコピーし、車を登録した。パキスタン人らの中古車販売業者から頼まれ、車の名義人になったようだ。「報酬」は1台1万〜1万5000円で、調べに「名義を貸せば金になると誘われた」と供述。販売業者の一人は「(川島被告から)不法滞在者に車を売って稼ぐ方法があると誘われた」と弁護人に話した。

 川島被告名義の車はいずれも1台15万〜25万円の中古車で、買い手は販売業者が口コミで集めたという。正規の方法では車の登録が出来ない者や、当初から犯罪に使うつもりの人物が買い手だったと警視庁はみている。

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 「川島車」は神出鬼没だ。

 山梨県都留市のファストフード店で昨年7月、偽1万円札を使って逃げた男が乗っていた。川崎市内の事務所窃盗で逮捕された中国人の男もそうだ。この男は「新宿で知り合ったパキスタン人から買った」と話した。茨城県岩井市と三和町で昨年3月と10月に起きたひき逃げ、栃木県小山市で9月にあった当て逃げ事故の車もだ。

 都内でも頻繁に登場する。葛飾区で01年暮れ、中国人が乗っていて事故を起こした。川島被告が今年1月に有罪判決を受けた後の5月にも足立区で当て逃げ事故があった。ほかに数十件の交通違反があるという。

 「名義人を割り出しても捜査が進まない。いつどこで新たな事件に使われるかもわからない」

 捜査幹部は悔しがる。(07/05 08:37)

http://www.asahi.com/national/update/0705/009.html