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2002年04月15日(月) 00時00分

ネット掲示板の匿名発言東京地裁、著作権認める毎日新聞

 インターネット上の掲示板に匿名のハンドルネームで書き込んだ内容を本に使用されたのは著作権侵害として、掲示板に書き込んだ11人が出版社の光文社や著者を訴えた民事訴訟の判決が15日、東京地裁(飯村敏明裁判長)であった。判決は匿名の書き込みに著作権を認め、出版差し止めと損害賠償金110万円余りの支払いを命じた。ネット掲示板での発言に著作権を認めたのは初めて。

 判決によると、昨年6月に光文社文庫から出版された「世界極上ホテル術」の中に、ホテル愛好者のホームページ「ホテル・ジャンキーズ」の掲示板に書かれた一部の書き込みを転載、編集した部分があった。同書は掲示板を管理している森拓之事務所と、同社取締役でホテルジャーナリストの村瀬千文さんが執筆、作成したもの。

 これに対し、書き込みをした東京都の松野志保さんら原告10人(後に1人追加)が著作権侵害にあたるとして、昨年7月に出版の差し止めと損害賠償を求めて同地裁に提訴。9月に出版差し止めの仮処分が出ていた。

 裁判で被告側は(1)掲示板の書き込みは事実の報告、感想に過ぎず、著作権法の保護対象にならない(2)匿名の書き込みは自ら書き込んだ文章に責任を負うことがないため、著作権を認める必要もない−−などと主張した。

 しかし、判決は「匿名による著作物の公表でも、著作物性を肯定する妨げにならないことは著作権法上明らか」としたうえで、ネット掲示板の書き込みについて著作権を認めた。また、投稿文書の多くは筆者の個性が発揮されたものとして、文章が比較的短く、表現に創意工夫がないものなどを除き、著作権保護の対象になり得る「著作物性」があるとした。

 判決について、原告事務局の永田衣代さんは「訴えを認めてもらえてうれしい。ただ、権利に義務は付き物で、書き込む側も気をつけなればならない」と話している。一方、光文社、村瀬さんとも「判決文の内容を検討したうえで、今後の対応を決めたい」としている。

 岡村久道近畿大講師(コンピューター法)は「著作権は匿名の著作物でも保護の対象とされている現実世界の論理を、サイバースペースの事案に持ち込んでいる。匿名の書き込みは、だれが著作者か調査するのは実際上は不可能に近い。ちょっとした書き込みでも権利が主張される点で、掲示板の運用者に今後大きな重圧がかかってくることが考えられ、気掛かりな判決だ」と話している。

 これに対して、田村善之北海道大学教授(知的財産法)は「引用も長い文章が多く、著作物性を認められるのは当然。サイトにあらかじめ『出版する』と明示してあれば済んだ話で、著作権に対する配慮が足りなかった。しかし、今回の判決は営利的な出版に対するもので、非営利の他の掲示板に引用する場合などの結論はまだ出ていないと思う。これから問題になるだろう」と話している。

[ホテルジャンキーズ掲示板で起きたこと](原告側)

http://www36.tok2.com/home/antihjc/a-news/index.html

[光文社]
http://www.kobunsha.com/top.html

[ホテル・ジャンキーズ]
http://www.hotel-junkies.co.jp/

(柴沼 均)

http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/200204/15-3.html

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