ためになる雑学シリーズ

シュレーディンガーの猫

今から100年ほど前、ドイツに「シュレーディンガー」と言う王様がいました。その王様は、たいそうイタズラ好きで、無理難題を考えては、領民を困らせていました。

ある時、箱のような装置を作り、町一番の天才を呼び付けて、こう言いました。

シュレーディンガー 「この箱の中には、放射性原子とそれが分裂したかどうかを検出する装置、そして、毒ガスと猫が入っておる(図1)。原子が分裂すると、検出器が作動して毒ガスが出る。当然、猫は死ぬことになる。さて、ここで問題じゃ。この箱を開けずに、中にいる猫を生け捕りにしてみよ。」

またもや、無理難題です。箱を開けずに猫を生け捕りにすることなど、出来るはずがありません。町一番の天才は、しばらく考えてこう言いました。

町一番の天才 「生け捕りにするためには、捕獲作業を始める段階で、生きていると言う保証が必要です。箱を開けずに、生きているという証明をしていただければ、作業を始めましょう」

シュレーディンガー 「ギャフン」(註:100年前なので、死語ではない)

ドイツでは、この時のことが元になって、「自分の出来ないことは、他人に要求しては行けない」と言う意味のことわざで、「シュレーディンガーの猫」と言うようになりました。なお、この事件の後、王様は「猫を虐待した罪」で、グリーンピースと言う団体に連れて行かれてしまうのですが、それはそれで別の話し。

図1






シュレーディンガーの猫(本当版)

シュレーディンガーは、100年ほど前、量子力学の発展に貢献した偉い科学者です。量子力学は、電子や原子と言った「肉眼では見ることの出来ないほど小さな物質」についての学問です。直接見ることは出来なくても、我々の体などは原子の集まりで出来ていますし、検出器などで調べれば、確かに存在していることが分かります。この「原子の存在」を、数学的な「式」で表したものを、「シュレーディンガーの方程式」と言います。

この方程式を解いてみると、実験的な事実と同じ答えが出てくるので、正しいと考えられてます。例えば、原子力爆弾や、コンピュータのLSI、テレビなどのブラウン管などは、この「シュレーディンガーの方程式」に沿って動いています。ですが、この方程式は、これまでの「常識」とは大きく異なる概念を含んでいるため、科学者の間でも、しばしば議論を引き起こします。その一つが、「観測が、状態を決定する」と言う概念であり、それを分かりやすく喩えたものが「シュレーディンガーの猫」です。

「シュレーディンガーの猫」は、図1のような「箱に入った猫」のことです。ただし、箱の中には「核分裂をする原子」「核分裂を検出する装置」および「検出器が動くと、毒ガスを発生する装置」も入っています。そして、「核分裂をする原子」はシュレーディンガーの方程式に沿って、ある時間後に核分裂をします。いつ分裂するかは、箱の外からでは分かりません。で、いつ分裂するかはわからないけれど、分裂した時は毒ガスが発生して、猫が死にます。

図1

この時、箱を開ける前の「原子の状態」は、どのようになっていると言えるでしょうか。量子力学では、「観測するまでわからないので、分裂していない原子と、分裂した原子が混ざった状態である」となっています。「混ざった状態」とは、普通では考えられませんね。普通は、どちらか片方の状態であるはずです。しかし、「シュレーディンガー方程式」では、「混ざった状態」と言う解が出てくるのです。

そうすると、箱を開ける前の「猫の状態」は、どうなるのでしょうか。原子の状態によって、猫の生死の状態が決定されるのですから、猫の状態も「生きた猫と、死んだ猫が混ざった状態」となってしまいます。なんか変ですね。これが、「シュレーディンガーの猫」と言うわけです。この状態を、表したものが図2です。常識的には、「箱を開けるまでは生死は分からない。いつの間にか猫が死んでいて、箱を開けた時に死んだ状態を観測する(図2a)」となります。量子力学では、「箱を開ける前は、生と死が混ざった状態で存在する。箱を開けた時に、生きるか死ぬかのどちらかの状態に変化する(図2b)」となります。

※量子力学は苦手だったので、間違っていたらゴメンナサイ。