■菅原明朗:歌劇《葛飾情話》
 このオペラは大正〜昭和初期に浅草で上演されていた日本語によるオペラ、俗に言う「浅草オペラ」のために作曲されたものです。「浅草オペラ」ではヴェルディの《椿姫》やビゼーの《カルメン》などの外国のオペラも数多く上演されていましたが、当時の日本の作曲家による新作オペラもさかんに上演されていました。《葛飾情話》もその一つで、永井荷風の台本により、菅原明朗(すがわらめいろう)が作曲しました。菅原明朗は1897年に兵庫県に生まれ、1988年に東京に没した作曲家で、瀬戸口藤吉に師事、戦前に新興作曲家連盟を設立したり、タケヰ楽団というオーケストラの指揮者をしたりして活躍した人です。戦後はイタリアに渡ってイタリアの現代音楽に触れ、その影響を受けた音楽を次々と発表していました。《葛飾情話》は1938年(昭和13年)に浅草オペラ館で上演され、評判となった作品だそうです。
 
■おもな登場人物 
大森よし子:バス会社の車掌、運転手の西村と恋仲で将来を誓い合っている(ソプラノ)
西村太郎:よし子と同じ会社のバス運転手(テノール)
お梅:二人が勤める会社のそばにある休茶屋の娘、西村に密かな恋心を抱いている(ソプラノ)
岩田:映画監督
千塚:カメラマン
高木:お梅の叔父
 
■ものがたり 
【第1場】
 バスの運転手の西村太郎と美人の女車掌大森よし子は、将来を誓い合った恋仲。その一方で休茶屋の娘お梅は、西村にひそかな恋心を抱いている。舞台は同時代の東京の下町、荒川の土手(船堀あたりがそのモデルとされている)、バス停近くの休茶屋。お梅が恋人のいない孤独な我が身を憂い、物思いに耽っていると、よし子との待ち合わせのために西村がやって来て、お梅の気持ちも知らずに他愛もない言葉をかける。やがてよし子が登場、2人は夕焼けを見ながら愛の言葉を交わす。よし子が残って土手の花を摘んでいると、映画監督の岩田とカメラマンの千塚がやってくる。彼らはよし子に前から目をつけていて、彼女を女優にスカウトしたいと言う。「映画スターになれる」という言葉に舞い上がったよし子はそれに応じ、思いとどまるよう説得する西村を捨て、映画の世界へ身を投じてしまう。  
【第2場】
 それから3年の月日が流れる。今や西村は彼をひそかに想っていた休茶屋の娘お梅と一緒になり、一児をもうけて平和で幸せな家庭を築いている。西村が子供の薬を買いに出ている時、雨が降る中、よし子が女優の夢破れて傷ついて戻ってくる。気の毒に思ったお梅は、雨が止むまで家で休むようによし子にすすめる。 そこにお梅の叔父、高木が訪ねてくる。お梅の父親が選挙のことで刑務所に入れられているというのだ。高木はお梅の母親に頼まれて、政治犯として拘留されてしまった父親の裁判や弁護士の費用を工面するために、お梅に花柳界(色町)で働いて欲しいと懇願に来たのだった。お梅は泣き崩れるが、この様子を目にしたよし子は、帰って来て様子を伺っていた西村を制して、堕落した私が身代わりになろう、あなたは西村さんと幸せに暮らしなさい、と申し出るのであった。 
 
   

 

 
 
 
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