自ら学ぶ力 
〜よい生活習慣がよい心を育てる〜
空気の教育

普通の学校には校則があります。先生から細かい規則で子供を縛るのはよくないという声が高まり、校則を簡素化したり、なくしてしまったところもあります。

集団生活をしていく上でのルールはやはりなくてはならないでしょうが、大人の世界でも規制緩和が望ましいこととされる風潮の中で、校則を細かくしたり、増やしたりということは考えられないでしょう。

そのためもあって、今の学校には校風というものが消えてしまっています。校風という言葉を知らないで卒業する子供が大部分です。しかし、子供たちが学んでいる学校にはそれぞれ違った校風を持っているのが自然でしょう。

家庭という学校にも、校則に当たるものがなくてはなりません。家則という事もできるでしょう。はっきり言葉にはなっていなくても、両親の考えと生活を反映したルールがあります。多くの場合、はっきりした形をとらず、意識されることも少ないのです。

かつては、それを家風と呼びました。子供の育ち方はこの家風によって大きく異なります。家風三代と言う言葉もあります。一朝一夕にできるものではありません。長い間、家族が生きてきて、自然に作り上げる目に見えない文化です。

その中で生活していると、ごく自然に、ありとあらゆるものの考え方、感じ方さえもそれによって決定づけられる事も少なくありません。

子供は、この家風によって育まれていきます。昔の人が、子供は”親の背中を見て育つ”という事を云いました。このごろの家庭の教育力が低下したと心配されていますが、ひとつには、家風がしっかりしていないからだということもできます。

親たちの生活がしっかりしていないと、家風は穏やかな心をはぐくむそよ風ではなくて、嵐、台風のようになってしまい、子供の心を傷つけます。

家庭という学校の先生は、まず、立派な家風を作らなくてはいけません。子供のために、努力して、よい生き方をするように心がける必要があります。子供のために、親はよりよき人間になることにつとめるのです。

子供に限らず、人間は、言葉にならない雰囲気、空気から深い影響を受けます。感化というのも空気による教育です。薫陶(くんとう)という言葉があります。人間の持っている人柄や人格によって他人を知らず知らずのうちに感化して立派な人間にする、という意味ですが、やはり、空気の教育です。

元の意味は土に香りをたき込め、しみこませて作る陶器のことです。

家庭という学校は、家風によって薫陶の教育を行うのです。口先だけで教えるのとはわけが違います。いわゆる学校はごくわずかしか薫陶のみを上げることはできませんが、家庭という学校は家風という濃密な空気がある限り、子供を人間として立派に薫陶することができます。

お父さん先生、お母さん先生に期待されるものはまことに大きく、名誉ある責任はきわめて重大です



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     外山滋比古先生
  大正12年1月3日 愛知県生まれ。

東京教育大学助教授、お茶の水大学教授を歴任
現在はお茶の水大学名誉教授
  前 全日本家庭教育研究会(ポピー)総裁
外山先生が書かれたものです。非売品であるため、
皆様も家庭教育を考える上で参考になるのでは、と思い掲載いたしました。
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