客席に垂れ幕を見つけた浜崎が、顔をくしゃくしゃにして笑った。「みんなで歌うから聴いて あゆが『せーの』って言って」。うれしそうに「せーの!」とマイクを向けると、約1万人が「Who…」を日本語で大合唱した。浜崎は中国語で「みんなありがとう。愛してるよ」と感謝し、お返しに同曲のサビを中国語で熱唱した。最後は「あゆ!」コールが館内を揺るがした。
約5000個の宝石が輝く和服姿からサンバまで、世界を意識した7種の衣装を用意して変幻ステージを演出した。愛する米ラスベガスのショーを参考に、昨年の全国ツアーで世界的マジシャン、ピーター・マービー氏に師事して精度を上げたイリュージョンの数々を惜しみなく披露。やまない喝采を、両手をあげて受け止めた。
過去に写真集の発売イベントや日中競演ライブに招待されたことはあったが、海外の単独公演は初めて。エイベックスのアジア進出の試金石として入場券の動向が注目されたが、1万席は、わずか2時間で完売した。昨年、台湾で公演した嵐は1日かけて1万5000席、台湾トップ歌手ジョリンでも2万席に2日かかっていた記録を更新し、台湾史上最速となった。
浜崎は、エイベックスが仕掛けるアジア戦略を背負って公演に臨んだ。「アジア最強のクリエイティブ能力を持つエンタテインメント企業」の目標を掲げるレコード会社の顔としての訪台だった。98年7月にエイベックス台湾を設立。昨年11月には北京にエイベックス・チャイナを起こすなど、エイベックスが理想とするアジア全域で通用する歌手を体現した。
浜崎は来春、活動10周年を迎える。日本で2枚計190万枚を出荷し、当地でも発売中の最新ベスト盤「A BEST2−WHITE−」「A BEST2−BLACK−」は、節目の来年に発売するのが自然だった。だが、アジアのファンの前に立つ今回のツアーを盛り上げるため、発売に踏み切った。来月には香港、上海でも公演を行う。