アレクサンドル・ペトロフ監督
「春のめざめ」から
イワン・シメリョフの短編小説が原作。16歳のアントンが、仲のよい使用人の少女パーシャと、妖艶(ようえん)な隣家の令嬢セラフィーマの間で揺れ動く。ペトロフは、リアルな情景の合間に、神話の英雄や荒れ狂う雄牛といったイメージをはさみ、熱に浮かされるような思春期の思いを描く。
「純粋な愛を求めつつ、性的な欲望にも突き動かされる。その葛藤(かっとう)を表現した」とペトロフ。「今の時代、若い人の愛と性を安易に扱う作品が多すぎると思う。愛とは奇跡であり、性は神秘的で壊れやすいもの、と伝えたかった」
油絵の具を使い、ガラス板に指で書いては消し書いては消し、という技法は、高い技術と忍耐が要求される。数人の助手を使い、別々のガラス板に描いた人物や背景をコンピューターで合成するなどして、3年がかりで27分の映像に仕上げた。「次は長編に取り組むつもりです」と話す。
東京・渋谷のシネマ・アンジェリカで、オランダのマイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督の短編「岸辺のふたり」(00年)と同時上映。