記事登録
2007年03月09日(金) 06時39分

警察庁が綿密な捜査徹底を通達 鹿児島公選法事件で朝日新聞

 鹿児島県議選で公選法違反の罪に問われた12人全員が無罪になった事件の捜査を検証していた警察庁は8日、全国の都道府県警察に綿密で適正な捜査を徹底するよう通達を出した。

 同庁は、「容疑者の心情を理解しつつ、真相解明するとの基本姿勢が不十分だった」などの問題点を指摘。当時の県警本部長の稲葉一次・関東管区警察局総務部長に対しては、長官が文書で厳重注意した。

 同庁は、鹿児島県警からの報告や判決内容を詳細に分析。その結果、容疑者の心情を理解しつつ、真相を解明するという基本姿勢が不十分だったうえ、心身の状態が供述の信用性に影響するのに、健康状態に対する注意が不足していた、と判断した。

 さらに、供述が客観的事実と矛盾しないかなどを吟味し、供述内容の変化を合理的に説明できるか、チェックが尽くされなかった▽関係者からの事情聴取、証拠資料の収集、アリバイ捜査が尽くされず、供述の信用性の判断が不十分だった——として、通達では、これらの点に注意するよう指示した。

 また、捜査を指揮する立場にある警察幹部に対しても、容疑者の取り調べ状況を把握し、供述の信用性を慎重に吟味したうえで、事件の全容を見極め、主体的・具体的に指揮するよう求めた。今後、都道府県警の巡回指導を行うほか、捜査員の研修内容を見直す。

 稲葉元本部長に対する厳重注意は、国家公務員法上の懲戒処分ではなく、業務上の指導だが、長官自らが文書で行うのは異例という。

 漆間巌長官は同日の記者会見で「全体を見渡して指揮するのが本部長の役割。事件を見極めて引くなら引く、更に詰めが必要なら詰めるよう言える資質がないと失格だ」と語った。

http://www.asahi.com/national/update/0309/TKY200703090021.html