ためになる雑学シリーズ
中世のヨーロッパは、魔術の時代であった。
当時、魔法や錬金術と言った、現代から見ると荒唐無稽な非科学的なものが、一般的に信じられており、呪術や占星術が人々の価値観に大きな影響を与えていた。たとえば、結婚式や葬式の日取り、旅行の日程などを、占星術によって決めることは普通に行われていたし、医療の現場でも、精霊の力を借りる儀式や除霊と言ったものが主流であった。
当然のごとく、そう言った神秘的な力を、悪い方向に利用しようとする人々も沢山いた。自分の嫌いな相手を、魔術によって不幸に陥れるのである。そう言った場合、精霊の力を借りることは出来ないので、悪魔や悪霊の力を利用することとなる。そして、悪魔の力を借りようとする儀式のことを、「黒ミサ」と呼んだ。
「黒ミサ」では、悪魔にささげる「いけにえ」が必要であるとされた。そのいけにえには、角に神秘的な力が宿るとされた「黒山羊」の頭や、地獄の門番ケルベロスの子孫と考えられていた「狗(現在の”犬”)」の肉が多く用いられた。
もちろん、そのような儀式を行ったからと言って、相手を不幸に出来るはずも無く、ほとんどの場合は失敗に終わった。それで、いかにも効果がありそうな「黒ミサ」も所詮は「見かけ倒し」と言う事から、見かけと実質とが一致しないことのたとえとして「羊頭狗肉」と言う言葉が用いられるようになった。
羊頭
狗肉